研究実績の概要 |
本年度は昨年度、一昨年度の研究内容を発展させ、マウス濾過手術モデルの解析をリンパ管のみから、遺伝子発現プロファイル全体に解析対象を広げた。その結果、マウス濾過胞モデルにおいて濾過胞部位で有意に発現が上昇したプローブを術後3日目で789個、術後7日目で871個検出した。Gene Ontology解析で術後3日目、7日目に共通してTリンパ球および好中球の遊走に関連する遺伝子発現経路の活性化が、術後7日目にコラーゲンの産生・分解経路の活性化が観察された。個々の遺伝子では、S100a8・S100a9といったアラーミン分子、サイトカインIl1b, プロテアーゼSerpinb2, 増殖型ケラチンKrt16など創傷治癒時に結膜上皮で産生される遺伝子群の発現増加が著明であった。また、術後7日目においてムチン遺伝子Muc5ac, およびゴブレット細胞のマーカーGp2の発現量が有意に低下していた。これらの結果を日本眼科学会総会およびAnnual meeting of Associations for Vision Research and Ophthalmologyの年次総会で発表した。学会発表におけるディスカッションから内容を吟味して、論文を執筆し、現在学術雑誌に投稿中である。また、遺伝子発現プロファイルで特に興味深い結果を示したいくつかの遺伝子に関して、遺伝子改変マウスを入手し、濾過手術モデルを作成、その機能解析も施行した。また、濾過手術の結果にマクロファージが重要な役割を果たしている可能性が考えられたため、クロドロネートリポゾームを使用したマクロファージ除去モデルマウスを作成し、濾過手術に与える役割を検証した。それらの結果は、2019年度の日本眼科学会総会に発表予定で、現在準備を進めている。
|