研究課題/領域番号 |
16K11304
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
後藤 浩 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10201500)
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研究分担者 |
臼井 嘉彦 東京医科大学, 医学部, 講師 (50408142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IgG4関連眼疾患 / ぶどう膜悪性黒色腫 / 眼窩悪性リンパ腫 / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
結膜やぶどう膜組織に発生する悪性黒色腫や眼内および眼付属器に生じる悪性リンパ腫は生命予後を脅かす疾患であるが、稀少な疾患であるため他臓器の悪性腫瘍と比較して研究の立ち遅れは否めない。応募者の施設は眼部悪性腫瘍を診療する機会が非常に多い特徴を生かし、ポストシーケンス時代のゲノム科学環境のもと、まずは眼部悪性腫瘍に対する包括的かつ網羅的なゲノム解析を行うことを目的としている。初年度ではIgG4関連眼疾患において病原微生物の網羅的解析を行い,HHV-6、HHV-7、EBVが抗原として病態に関与している可能性(Sci Rep 2016)を報告した。また、ぶどう膜悪性黒色腫における眼内液中のサイトカインを網羅的解析を行った結果、Angiogenin、MCP-1、IL-8が診断マーカーになりえることを報告した(Graefe Arch Clin Ophthalmol. 2017)。平成29年度では、眼窩に生じるリンパ増殖性疾患、なかでも低悪性度リンパ腫(MALTリンパ腫)、反応性リンパ組織過形成(RLH)、IgG4リンパ関連増殖疾患(IgG4)の診断は、臨床的には画像診断検査を駆使しても鑑別はほぼ不可能であり、生検後の病理組織学的検索においても形態学的な類似性を示すことから診断に苦慮することがある。免疫組織化学染色は鑑別に有用なテクニックであるが、定性的な評価にとどまり、時に評価に難渋することがある。そこで、各疾患の生検組織を用い、免疫学的表現型の発現パターンをフローサイトメトリーで網羅的に検索を行い、病理組織学的に比較検討を行った結果、CD23およびCD25がマーカーとして鑑別に有用であることを報告した(Jpn J Ophthalmol. 2017)。現在IgG4関連眼疾患において、TRIOBP、INF2など新規遺伝子変異を同定し論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は眼窩悪性リンパ腫6検体、IgG4関連眼疾患12検体、ぶどう膜悪性黒色腫6検体、眼内リンパ腫3検体に対して次世代シークエンサーを用いて遺伝子変異の網羅的検索を行っている。次世代シークエンサーにより検出された高率に変異する遺伝子を同定できた。特にFMN2、GLTSCR1、INF2、TFAP2A、TRIOBP、TTC19、XISTでは末梢血および口唇粘膜をコントロールとしても全例で遺伝子変異をみとめた。また、眼内液および血清中レベルでのタンパク質の同定も並行して行うことによって、遺伝子産物と臨床病理学的所見との関連の検証を計画している。得られた包括的データと各腫瘍の臨床像や予後との関連についても解析することによって、新規診断マーカーとしての可能性や生命予後推定因子としての意義についても検討を予定している。2016年度および2017年度で3報の英文誌に成果を報告することができ、次世代シークエンサーによる解析も進行中であることから、おおむね研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シークエンサーで解析を行っている眼窩悪性リンパ腫、IgG4関連眼疾患、ぶどう膜悪性黒色腫、眼内リンパ腫を中心に症例数を増やしつつ遺伝子変異を調べることによって、発癌メカニズムの詳細な解明、新たなバイオマーカーの探索、臨床経過との相関(生命予後予測や治療効果判定)と、得られた結果を統合し、個別治療の確立につなげるデータとしていきたい。また、RNASeqも行っており、多くの新規遺伝子異常をみつけている。これらをReal-time PCRを用いて確認を行っていく。最近ではメタボロームの網羅的解析も行っており、ゲノム異常との相関もみていく予定である。また、これらの得られた研究成果を学術誌に投稿するとともに、国内および国際学会の場で研究成果を発表していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年3月に注文した試薬が年度内に届かなかったため当該助成金が残った。そのため、試薬が届き次第速やかに使用する予定である。
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