研究課題
<平成28年度:網膜色素変性症患者iPS細胞ノックインライン樹立>本研究では,これまでに既に作製された網膜色素変性症患者由来iPS細胞(RP1,RP9,PRPH2,RHO:Jin ZB et al., 2011;CEP290:未発表)を使用する.こちらについて,現在,理化学研究所バイオリソースセンターに供与申請を行っているが,このときに慶應義塾大学の倫理委員会の承認必要となったため現在申請を行っているところである.そこで,まずはコントロールのヒトiPS細胞(454E2)および,以前作製した視細胞標識ヒトiPS細胞ライン(Crx::2A::E2)について,桿体,錐体視細胞を選択的に標識するために,CRISPR/Cas9システムによるノックイン方法を行った.この方法では,ターゲットとなるタンパク質が発現した時に蛍光タンパク質がターゲットのタンパク質と等量発現する.本研究では,桿体視細胞を標識できるNRL,錐体視細胞を標識できるPDE6Hの遺伝子へのノックインを行った.手順としては,各遺伝子の3’末端の遺伝子部位の上流と下流をクローニングして,ドナーベクターに挿入した.このときに,標的遺伝子のストップコドンを削除した.標的遺伝子の後に2Aペプチドと蛍光タンパク質遺伝子を挿入し(同時に,抗生物質耐性遺伝子発現カセットも挿入)した.また,Cas9のターゲットを決めるsingle-guide RNA(20塩基)を発現するベクターを作製する.これらとCas9発現ベクターを同時にエレクトロポレーションでiPS細胞に遺伝子導入し,その後2週間ほど抗生物質を添加した培地で細胞を選択することでシングルコロニーを採取することができた.現在,これらの細胞の維持培養および分化培養を開始している.
2: おおむね順調に進展している
網膜色素変性症患者由来iPS細胞の取得にやや時間がかかっているが,桿体視細胞,錐体視細胞を標識するためのノックイン方法がうまくいくことをコントロールのヒトiPS細胞で確認することができた.疾患iPS細胞の取得については,理化学研究所バイオリソースセンターの供与申請をする際に,受け入れ研究所の倫理委員会の承認が必要であるということがわかり,申請者が本年1月から所属した慶應義塾大学倫理委員会の承認を得るべく書類を作成し,提出したところである.
今後,慶應義塾大学倫理委員会の受け入れ承認を得た後に,理化学研究所バイオリソースセンターから網膜色素変性症患者由来iPS細胞の供与を受け,順次,うまくいったベクターを用いてノックインラインを取得し,分化培養を開始する.
昨年度,理化学研究所バイオリソースセンターから網膜色素変性症患者由来iPS細胞の供与を受ける予定であったが,細胞受け入れに際して,申請者が昨年度1月から所属を変更し,新しい所属で倫理申請をする必要が生じ,受け入れにやや時間が必要となっている.このため受け入れに必要な金額が昨年度でなく,本年度に持ち越されることとなった.
本年度は,理化学研究所バイオリソースセンターから網膜色素変性症患者由来iPS細胞の供与を受ける費用として用いられる.
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