研究実績の概要 |
本研究では,これまでに既に作製された網膜色素変性症(RP)患者由来iPS細胞(RP1,RP9,PRPH2,RHO:Jin ZB et al., 2011;RHO#5, RHOmut-induced: Yoshida T et al., 2014)を使用した。これらは理化学研究所バイオリソースセンターに供与申請行い,慶應義塾大学の倫理委員会の承認後に入手することができた。得られたRPのiPS細胞のライン(59M8(RHO_562G>A変異),K10M5(RP9_410A>T変異),K11PD17(RP9_410A>T変異),K21S4(RP1_2162insC変異),K31M28(RHO_520G>A変異, PRPF31_613_615delTAC変異),RHO#5(RHO_541G>A変異, RHOmut-induced(RHO_541G>A変異)のゲノムを抽出しシークエンスでヘテロの変異を確認した。これらのラインから分化させた桿体視細胞を選択的に標識するために、CRISPR/Cas9システムによるノックインを行った。この方法では,ヒトゲノム上のSafe harborと言われるAAVS1サイトに桿体視細胞に特異的なNrl遺伝子のプロモーターGFP発現カセット(Nrlp-GFP)を挿入した。これにより、網膜桿体視細胞に分化した細胞をGFPで標識することができ、その後の遺伝子発現、機能解析を行うことが可能となった。また、コントロールのラインとして網膜視細胞全般(Crx遺伝子)と錐体視細胞(Pde6H遺伝子)を標識するゲノム編集をCRISPR/Cas9で行い、分化した視細胞の遺伝子発現解析を定量PCRによって解析を行った。このラインとNrlp-GFPのノックインラインを用いることで、基準となるコントロールの視細胞の遺伝子発現が解析可能となった。現在、樹立した,網膜錐体視細胞および桿体視細胞を標識することができるコントロールiPS細胞を用いて、遺伝子解析を行っているところである(未発表)。これらコントロールラインと、疾患iPS細胞ノックインラインから分化した蛍光タンパク質標識視細胞を比較することによって疾患メカニズムやドラッグスクリーニングを検討することができる。
|