研究課題/領域番号 |
16K11310
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南塲 研一 北海道大学, 大学病院, 講師 (70333599)
|
研究分担者 |
清野 研一郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (20312845)
北市 伸義 北海道医療大学, 個体差医療科学センター, 教授 (40431366)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / マクロファージ様免疫抑制性細胞 / 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎 / 臨床スコア / 組織学的スコア |
研究実績の概要 |
マウスiPS細胞からマクロファージ様免疫抑制性細胞(iPS-SCs)を誘導し、iPS-SCsの免疫抑制能についてリンパ球混合試験にて確認した。 次にマウス実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎 (EAU)をiPS-SCsにより抑制できるかどうかを検証した。1回目の実験では6週齢のオスのマウス(C57BL/6)10匹を用いて(コントロール群:5匹、治療群:5匹)検討した。マウスEAUを作製するためにヒト視細胞間レチノイド結合蛋白由来合成ペプチド(hIRBP1-20)を皮下投与する(免疫)が、その1日前にコントロール群の5匹にはPBSを、治療群の5匹にはiPS-SCs(7.5×105個/匹)を腹腔内投与した。免疫1週間後から3-4日毎に眼底検査を行い臨床スコアをつけ、21日後に眼球摘出し組織学的スコアをつけた。1回目の実験の臨床スコアでは免疫後7日目、11日目、14日目ではコントロール群と治療群の間に有意な差は見られなかったが、17日目と21日目には治療群の臨床スコアはコントロール群に比べて有意に抑制されていた。しかしながら組織学的スコアでは両群に有意な差は見られなかった。2回目の実験はマウス11匹(コントロール群:6匹、治療群:5匹)においておこなった。免疫後7日目、14日目、17日目、21日目には臨床スコアに両群間で有意な差は見られず、10日目のみ治療群の臨床スコアはコントロール群に比べて有意に抑制されていた。組織学的スコアは2回目の実験でも有意な差はみられなかった。 今後は3回目の同様の実験を行うと同時に、iPS-SCsの炎症抑制効果についてin vitroで検証する。免疫後のマウスリンパ節から抽出したT細胞、抗原提示細胞、抗原(hIRBP)とともにiPS-SCsを共培養することでT細胞の増殖を抑制できるかを検証する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々の研究室で以前よりおこなっているマウスEAUの誘導は問題なくおこなわれているが、iPS-SCsをマウスへ移入するための細胞培養に予定よりも時間がかかっている。これまで2回の実験をおこなうことができたが、iPS-SCsの必要細胞数の確保が遅れているため、3回目の実験、in vitroの実験が少し遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた2回の実験による臨床スコアの結果から、1回目はiPS-SCs投与群と非投与群で有意な差が見られたが、2回目は有意な差は見られなかった。そこで、3回目の実験をおこなうとともに、iPS-SCs投与の時期について検討をおこなうこととする。 次に、iPS-SCsのEAU惹起T細胞への抑制効果についてin vitroで検証する。方法はC57BL/6マウスにペプチド抗原(hIRBPp1-20)を皮下投与して免疫し、その7日から10日後にリンパ節を採取しT細胞抽出カラムを用いてCD4陽性T細胞のみを抽出。無処置のC57BL/6マウスの脾臓細胞をX線照射処理し抗原提示細胞を得る。1wellにT細胞 、抗原提示細胞、iPS-SCs、ペプチド を0μM(control)、0,001μM、0.01μM、0.1μM、1μM、10μMを共培養する。培養上清をELISAで炎症性サイトカイン(IFN-γ, TNF-α, IL-6, IL-4, IL-10, TGF-b2 など)を計測、培養細胞は[3H]-thymidine取り込み量によって細胞の増殖能を計測しする。以上の手法によりiPS-SCsのT細胞増殖能に対する抑制効果について検証する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
iPS-SCsの培養に予想以上に時間がかかり、その遅延分の培養に掛かる費用、その後のマウスを使った研究に掛かる費用が繰り越しとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
遅延を取り戻すために、iPS-SCsの培養を昨年度以上におこなうとともに、in vitroでのiPS-SCsの機能について検証をおこなう。また、マウスにおけるEAUのiPS-SCsでの抑制について再検証するとともに、iPS-SCsの最適な投与時期についても検証する。
|