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2016 年度 実施状況報告書

網膜色素変性に対するカルパイン分子標的を応用した新規治療法

研究課題

研究課題/領域番号 16K11313
研究機関弘前大学

研究代表者

中澤 満  弘前大学, 医学研究科, 教授 (80180272)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード遺伝性網膜変性疾患 / 網膜色素変性 / 眼薬理学 / 光干渉断層法 / 視細胞保護
研究実績の概要

細胞死に関与する因子のひとつであるカルパインのうち、ミトコンドリアカルパイン-1を特異的に阻害するペプチドについて、ラット眼球を用いてペプチドを点眼することで網膜や視神経乳頭への送達の動態を免疫組織化学法およびERISA法を用いて定性的および定量的に解析した。その結果、野性型ラットにおいてはペプチド点眼後1時間にて網膜および視神経乳頭にまで到達しているこのが明らかとなり(4.48マイクロM)、以後急速に量は減少するものの6時間後でも網膜内濃度は0.29マイクロMと、本ペプチドのIC50と考えられる197nMを十分に上回っていた。このことからラットのような齧歯類の場合、本ペプチドのような分子量2,000程度の分子であれば6時間毎の点眼にても十分に網膜視細胞層まで、有効濃度を維持できる可能性が示唆された。
また、網膜変性の指標として光干渉断層法(OCT)の所見を参考にする目的から、RCSラット、ロドプシンP23HおよびS334terトランスジェニックラットにおける網膜変性の自然経過をOCTにて経時的に観察し、そこで観察された異常所見が視細胞のどのような病理所見に対応するものであるかを光学顕微鏡所見と電子顕微鏡所見ならびに網膜電図などの所見と照合することで解析した。その結果、それぞれの特異的遺伝子変異に対応してOCT所見による視細胞内節および外節層の所見の変化や外顆粒層の厚さの変化などに特徴的所見を認めた。遺伝子変異の違いによりOCT所見と網膜電図の関連性にも特徴的な差異がみられることが判明した。今後、各遺伝子変異動物によるペプチド投与による視細胞保護効果をOCTにより検討するに当たって基礎となるデータを得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究立案の頃は動物用OCTによる網膜断層撮影の方法にやや困難を感じていたが、試行錯誤を繰り返すことで次第にそのノウハウを習得できた。現在ではかなり明瞭な画像を得ることができるようになっている。また、新規に取得した動物用網膜電図計の使用方法にも慣れ、安定した波形を得ることが出来るようになっている。さらに、光学顕微鏡標本や電子顕微鏡標本の作製に当たって、当初は網膜剥離は不可避的に発生していたが、これも専門家にアドバイスをもらい、眼球の固定法に問題があったことが判明して試行錯誤を繰り返した結果、現在では網膜剥離の発生は激減している。平成29年度はペプチドを実際に変性動物に投与して実際にOCT上でどのような変化が観察されるのかを中心に研究を進めることができる状態にある。

今後の研究の推進方策

ミトコンドリアカルパイン-1阻害ペプチドが原因遺伝子変異秘匿的に視細胞保護効果を示すかどうかの研究に進む予定である。具体的にはこれまでのRCSラット、ロドプシンP23HおよびS334terトランスジェニックラットに加えて、Rd1, Rd2, RDH5ノックアウトマウスおよびRPE65ノックアウトマウスを加えて保護効果を検討する。検討方法は前年度に検討したOCT、網膜電図、光学組織所見および電子顕微鏡所見を用い、RCSラットやロドプシントランスジェニックラットにおいてはペプチド点眼開始時期の違いによる視細胞保護効果の差異の有無についても明らかにしたいと考えている。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Optical coherence tomography of retinal degeneration in Royal College of Surgeons rats and its correlation with morphology and electroretinography2016

    • 著者名/発表者名
      Adachi K, Takahashi S, Yamauchi K, Mounai N, Tanabu R, Nakazawa M
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 11 ページ: e0162835

    • DOI

      doi:10.1371/journal.pone.0162835

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Profiles of inflammatory cytokines in the vitreous fluid from patients with rhegmatogenous retinal detachment and their correlations with clinical features.2016

    • 著者名/発表者名
      Takahashi S, Adachi K, Suzuki Y, Maeno A, Nakazawa M.
    • 雑誌名

      BioMed Research Interntional

      巻: 2016 ページ: 4256183

    • DOI

      doi:10.1155/2016/4256183

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Acute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathy and granulomatous uveitis following influenza vaccination.2016

    • 著者名/発表者名
      Gonome T, Suzuki Y, Metoki T, Takahashi S, Nakazawa M
    • 雑誌名

      Am J Ophthalmol Case Reports

      巻: 6 ページ: 60-63

    • DOI

      10.1016/j.ajoc.2016.08.008

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Level of vascular endothelial growth factor in the vitreous fluid of proliferative diabetic retinopathy patients and postoperative complications of vitrectomy2016

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Y, Suzuki K, Kudo T, Metoki T, Nakazawa M
    • 雑誌名

      Ophthalmologica

      巻: 236 ページ: 133-138

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 両眼脈絡膜骨腫に脈絡膜新生血管を合併した1例2016

    • 著者名/発表者名
      髙橋 静、鈴木幸彦、陳内嘉浩、吹田淑子、目時友美、中澤 満、佐藤元哉
    • 雑誌名

      臨床眼科

      巻: 70 ページ: 695-702

    • 査読あり
  • [学会発表] ロドプシンS334ter変異ラットの網膜変性過程のOCT所見による解析2017

    • 著者名/発表者名
      山内宏大、田名部玲子、毛内奈津姫、髙橋 静、安達功武、中澤 満
    • 学会等名
      第121回日本眼科学会総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京都)
    • 年月日
      2017-04-06 – 2017-04-09
  • [学会発表] ロドプシンP23H変異ラットの網膜変性過程のOCT所見による解析2017

    • 著者名/発表者名
      毛内奈津姫、田名部玲子、山内宏大、髙橋 静、安達功武、中澤 満
    • 学会等名
      第121回日本眼科学会総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京都)
    • 年月日
      2017-04-06 – 2017-04-09
  • [学会発表] RCSラット網膜変性自然経過のOCT所見2016

    • 著者名/発表者名
      安達功武、髙橋 静、中澤 満
    • 学会等名
      第20回眼科分子生物研究会
    • 発表場所
      登別温泉第1滝本館(北海道、登別市)
    • 年月日
      2016-06-25 – 2016-06-26
  • [学会発表] RCSラットにおける自然経過でのOCT変化2016

    • 著者名/発表者名
      安達功武、高橋静、中澤 満
    • 学会等名
      第120回日本眼科学会総会
    • 発表場所
      仙台国際ホール(宮城県、仙台市)
    • 年月日
      2016-04-07 – 2016-04-10
  • [図書] 標準眼科学 第13版 (硝子体、網膜)2016

    • 著者名/発表者名
      中澤 満
    • 総ページ数
      分担執筆45ページ(総ページ数365ページ)
    • 出版者
      医学書院
  • [図書] 網膜変性疾患診療のすべて.眼科臨床エキスパート(細胞内カルシウム濃度、小口病)2016

    • 著者名/発表者名
      中澤 満
    • 総ページ数
      分担執筆5ページ(総ページ数390ページ)
    • 出版者
      医学書院
  • [備考] 弘前大学医学部眼科学教室、診療案内

    • URL

      http:/www.med.hirosaki-u.ac.jp/~ophthalmol/consult.html

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公開日: 2018-01-16  

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