研究課題/領域番号 |
16K11320
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上野 真治 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80528670)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 網膜色素変性 / 網膜電図 / リモデリング / 網膜変性モデル / 遺伝子改変ウサギ / 双極細胞 / フリッカERG |
研究実績の概要 |
フリッカERGの構成成分はON型とOFF型の双極細胞が主であり、それらの関与の度合いが振幅に影響することが報告されている。またフリッカERGは、短時間に多くの加算平均ができるため網膜色素変性の他覚的な機能評価としてよく用いられている。しかし、変性網膜において、フリッカERGの波形がどのように細胞の構成成分に変化するかは全く知られていない。今回我々は杆体系の反応がほぼ消失した18か月齢のTgウサギのフリッカERGを解析した。白色家兎の18か月齢の野生型(WT)とP347LTgウサギ(Tg)それぞれ4羽を対象とし、種々の条件でフリッカERGを記録した。ON型およびOFF型双極細胞由来の応答を阻害する薬剤を硝子体内投与し、刺激周波数を13段階で変化させてフリッカERGを記録した。得られた波形をフーリエ変換とベクトル解析の手法を用いてその構成成分を解析した。WTでは低刺激周波数(3.906Hz)においてフリッカERGの振幅はピークを認め、周波数が増加するにつれて振幅は低下した。一方、Tgでは3.906Hzにおいて最も振幅が小さく、15.625Hzにおいて振幅のピークを認めた。各成分の解析では、WTと異なりTgではOFF型双極細胞由来の応答が増大しており、3.906HzではON型双極細胞由来の応答との位相の差が約180°であり、それぞれの成分が相殺されることにより振幅が低下することが分かった。このように、網膜変性の過程でON・OFF型双極細胞由来の応答の振幅、位相の変化によりフリッカERGの振幅が増減することが分かった。今回の結果は変性網膜におけるフリッカERGは、振幅で評価することは適さないという結果であった。この内容はInvestigative Ophthalmology and Visual Scienceの2017年3月号に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、おおむね研究は順調に進んでいる。2017年度はTgウサギを用いた実験ではERGによる機能的なリモデリングにつき新しい発見を行い論文化した。組織に関しては視神経の形態評価を行っており、現在論文を作成中である。また、眼内液の採取も順調でありELIZAキットも入手しており、2018年度中には実験が終了する予定である。一方、臨床に関しては角膜電気刺激による網膜内層の保護効果の検討予定であったが、前向き試験の倫理申請が難しく進んでいない状況である。また網膜色素変性における神経保護効果の機能評価が難しいため、現在網膜色素変性の網膜機能解析法を研究することにした。2017年度に網膜色素変性の機能解析に関する論文が2報掲載された。網膜色素変性の臨床においても、方向性は少し変わったが研究成果が順調に出ている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、予定通りTgウサギの神経節細胞の機能を角膜電気刺激にて評価が終了した。また、視神経の形態とその機能についての結果はでており現在論文化している所である。Tgウサギの眼内液の組成に関しては試料の採取してH30 年度中に結果を出して論文化の予定である。 患者への角膜電気刺激に関しては、侵襲のある前向き試験ができにくい状況になっており、最終年度までには行えない可能性が高くなっている。その代わりに網膜変性における視機能評価法についての研究を進めており、現在投稿準備中である
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次年度使用額が生じた理由 |
網膜色素変性患者における、角膜電気刺激を計画していたが、計画が進まないために若干の未使用額が生じた。次年度の試薬の購入に使用する予定である。
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