今年度は、昨年度までに行った研究である網膜色素変性モデルウサギの網膜機能と形態の長期経過(研究1)と角膜電気刺激による脳波(electrical evoked response:EER)と視神経の形態(研究2)についての2つの論文を投稿した。研究1は Tgウサギの網膜機能の長期経過をみたもので、網膜変性に伴い、網膜電図は徐々に振幅が低下し、すべての個体で5歳までに消失した。また、網膜変性に伴い網膜の外層の視細胞層が消失するだけでなく、網膜変性の末期では内顆粒層や神経節細胞層の構造が著しく乱れやミュラー細胞の増殖がみられたことを報告した。このことは、網膜変性に伴ってこのウサギでは激しいリモデリングが起きていることを示していた。2019年7月にExperimental Eye Researchにより受理された(Course of loss of photoreceptor function and progressive Muller cell gliosis in rhodopsin P347L transgenic rabbits.)。 研究2は視細胞が消失した後のTgウサギ網膜内層機能を網膜電気刺激による脳波(electrically evoked response: EER)で評価し、視神経線維との相関を調べた。視細胞がほぼ消失した変性末期のウサギを用いた実験では、EERの減弱の程度は、視神経の軸索の減少度に比較して有意に大きかった。このことは、網膜色素変性でほぼ視機能を失った患者に人工網膜の移植をする際にEERで網膜内層機能を評価するが、視神経の形態がよい患者でも除外される可能性を示していた。2019年6月にInvestivative Ophthalmolgy and Visual Science (Electrically Evoked Potentials Are Reduced Compared to Axon Numbers in Rhodopsin P347L Transgenic Rabbits With Severe Photoreceptor Degeneration.)により受理された。研究費は投稿料に利用された。
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