眼部サイトメガロウイルス(CMV)感染症を診断するうえで前房水 real-time PCR検査は有用な検査である。そこでこの検査の標準化を目的に日本においてCMV real-time PCRを行っている代表的な施設群を対象に、感度、特異度評価を行った。その結果、すべての施設において良好な結果を示した。しかしながら、多施設間の結果を比較統合する場合、international Unit(IU)により標準化した数値を使用することが推奨されることを報告し受理された。臨床サンプルを用いた解析より、CMVは角膜内皮炎や、前部ぶどう膜炎の病型においてはCMV DNA量が、網膜炎型よりすくないことが判明した。中でもCMV内皮炎とぶどう膜炎は共通してCMV DNA量と関連して眼圧があがることがさらに確認された。また、CMV内皮炎の病型では、経過が非常に長く断続的な眼圧上昇と角膜内皮ロスをくりかえし、これらに関連して最終的な視力予後が不良になることが判明した。 以上の事実は、CMVが角膜内皮のみならずおそらく線維柱帯に慢性に感染していることを示唆している。そこで、CMVの線維柱帯細胞への感染性を検証した。とくにCMVのTowne株やTB40/E株のいずれもが線維柱帯細胞に感染し、その後効率的に増殖し、成熟ウイルス粒子を放出することを報告し受理された。以上の結果は、難治化する症例においては、まずCMVと線維柱帯細胞との相互作用がきっかけになる可能性を示唆していた。そこで、CMVが線維柱帯細胞に感染していかなる分子応答を誘導するのかをRNA sequencing を用いて検証した。その結果、CMV感染後、角膜内皮と同様強いインターフェロン反応を誘導すること、さらにケモカイン群の誘導より線維柱帯のリモデリングを誘導する可能性が示唆された。
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