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2016 年度 実施状況報告書

失明疾患モデルにおけるグルタミン酸を用いた内在性幹細胞誘導による網膜再生法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 16K11323
研究機関山口大学

研究代表者

徳田 和央  山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50266863)

研究分担者 園田 康平  九州大学, 医学研究院, 教授 (10294943)
藏滿 保宏  山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50281811)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード網膜再生 / 内在性神経幹細胞 / グルタミン酸 / エネルギー代謝 / 失明予防
研究実績の概要

グルタミン酸による内在性の網膜幹細胞誘導に着目し、網膜再生法の確立を進めている。
平成28年度は、網膜幹細胞誘導時のエネルギー代謝動態の変化を調べるため、成体ラット網膜の内在性網膜幹細胞を低濃度のグルタミン酸で誘導し、主に解糖系について検討を行った。
種々の解糖系酵素群の増減を調べたところ、網膜幹細胞誘導時には、解糖系律速酵素の一つであるピルビン酸キナーゼ(PK)を含む複数の酵素が上昇していた。また、PKのアイソフォームの内、特に乳酸を増加させるM2型(PKM2)の発現が上昇し、実際に網膜内の乳酸も増加していた。更に、PKM2の細胞内局在について解析をすすめ、網膜幹細胞誘導時にはPKM2が細胞質内から核内に移行することを明らかにした。これらの結果をまとめ、論文として報告した(Tokuda et al., 2016)。核内に移行したPKM2は細胞増殖に関与する転写因子を促進することが報告されており、申請者らはPKM2が内在性網膜幹細胞誘導における幹細胞の増殖を制御する因子の候補の一つであると考えている。
上述のように、内在性網膜幹細胞誘導時は、解糖系が亢進し乳酸が増加するなど、代謝動態としては腫瘍細胞におけるワールブルグ効果様変化を呈した。そこで、腫瘍細胞での増殖シグナルの変化にも注目し、その動態を報告した(Y. Wang, K. Tokuda et al., 2017)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

内在性網膜幹細胞誘導による網膜再生をより確実に遂行するため、増殖を制御する因子を見出す必要がある。分化した神経細胞と比較して、神経幹細胞では糖質や核酸などの代謝が亢進することが報告されているため、初年度は幹細胞誘導時における代謝動態のダイナミズムを解析してこれを報告した。代謝動態に関与する酵素群の解析を進めるなかで、PKM2の核内移行を明らかにし、これが幹細胞の増殖をコントロールする因子の一つである可能性を示した(Tokuda et al., 2016)。
更に解糖系以外のエネルギー代謝動態の変化に関しても検討し、幹細胞誘導時には、他の経路においても特有の酵素群の発現が上昇することを明らかにした。また、代謝動態を制御する因子群に関しても解析を行い、網膜幹細胞誘導時に特異的に上昇する因子を見出した。この因子は、前述の酵素であるPKM2と相互作用があることが確認出来ている。これらの結果については、現在、論文投稿の準備中である。
以上に述べた様に、申請時の研究計画に沿い、網膜幹細胞誘導時の代謝動態を解析して、エネルギー代謝が幹細胞特有の動態を呈していることを示した。また、代謝動態を制御する因子や幹細胞増殖にかかわる因子の解明も出来ていることから、実験計画は概ね順調に進んでいると考えられる。

今後の研究の推進方策

研究計画書に従い、内在性網膜幹細胞誘導による網膜再生法の確立を目指し、次のステップを進める。
まず、培養ミュラー細胞にグルタミン酸を添加し、単離ミュラー細胞を退行分化後、網膜神経細胞へ分化誘導する(Takeda et al., 2008)。分化誘導した細胞について、FCMおよびイメージングサイトメーターを使用し、細胞の経時的な形態学的変化や免疫染色(杆体視細胞; rod opsin、双極細胞; PKC-γ、神経節細胞; thy 1 など)による分化の確認を行うとともに、コロニーアッセイや細胞表現系の定量を行う。
また、成体ラット網膜の内在性網膜幹細胞を低濃度のグルタミン酸で誘導し、網膜神経幹細胞マーカー陽性細胞をPinpoint Slide DNA/RNA Isolation Systemに採取し、DNA/RNAを溶出後、次世代シークエンサーを用いて、ゲノムおよびmRNAの発現変化を網羅的に解析する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初の予定より、蛍光マイクロビーズアレイシステム関連の試薬購入費用を抑えることができた。また、初年度の成果を発表するのに適した学会の開催が次年度であったため、旅費が不要となった。そのため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

ゲノムでの発現解析並びにタンパク質解析を進める目的で、複数のシステム機器を使用する必要がある。それらの機器の使用料や、機器に対応した解析関連試薬の購入に使用する予定である。また、初年度の成果を発表するため、既に国内外の学会に演題を提出しており、その旅費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [国際共同研究] University of Malta(マルタ)

    • 国名
      マルタ
    • 外国機関名
      University of Malta
  • [雑誌論文] PI3K inhibitor LY294002, as opposed to wortmannin, enhances AKT phosphorylation in gemcitabine-resistant pancreatic cancer cells2017

    • 著者名/発表者名
      Wang Y,Kuramitsu Y,Baron B,Kitagawa T,Tokuda K,Akada J,Maehara SI,Maehara Y,Nakamura K
    • 雑誌名

      Int J Oncol

      巻: 50 ページ: 606-612

    • DOI

      10.3892/ol.2016.5352

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Changes in metabolic proteins in ex vivo rat retina during glutamate-induced neural progenitor cell induction2016

    • 著者名/発表者名
      Tokuda K,Kuramitsu Y,Baron B,Kitagawa T,Tokuda N,Kobayashi M,Kimura K,Sonoda KH,Nakamura K
    • 雑誌名

      Mol Cell Biochem

      巻: 419 ページ: 177-184

    • DOI

      10.1007/s11010-016-2769-z

    • 査読あり

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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