研究課題
経口免疫寛容により既に発症したアレルギー性結膜炎を効率よく抑制するため、抗原感作成立後に経口免疫寛容を誘導する方法を検討した。まず、アレルギー性結膜炎を安定して発症させるため、抗原(卵白アルブミン)の感作量を0.1μg, 1μg, 10μg, 100μgの4段階で比較した。それぞれの抗原を水酸化アラムとエマルジョンを作成し、皮下に注射し、その後、抗原を点眼する方法で結膜炎を誘導した。結膜炎を評価するために、抗原点眼後24時間目の臨床スコアと、摘出した結膜の組織標本をギムザ染色することにより、結膜に浸潤した好酸球数を計数した。その結果、感作する抗原量としては100μgが至適であることが確認できた。続いて、経口投与法を検討した。2回の抗原感作終了後(初回の抗原感作から2週間後)より17日間抗原を経口投与する、いわゆる治療的投与法で検討した。投与方法は1)飲料水に混ぜる、2)ゾンデで投与する、3)餌に混ぜる、の3つの方法を比較した。同時に経口投与する抗原量を比較した。これまでの検討から、治療的投与においても20mgの卵白アルブミンをゾンデで投与する方法が安定して経口免疫寛容を誘導できることが明らかとなった。本年度は、より強力に経口免疫寛容を誘導するためゾンデによる経口投与開始を2回目の抗原全身感作時とし、抗原の経口投与期間をさらに1週間延長した。その結果、抗原20mgを投与したマウスにおいて結膜炎が抑制されることがわかった。免疫応答を検討した結果、対照群と比較し、経口投与群ではTh2応答が抑制される傾向にあった。
2: おおむね順調に進展している
本年度はこれまでに得られたサンプルの免疫学的評価を行った。前年度の検討では、抗原20mgを17日間治療的投与すると結膜炎が抑制される傾向にあったが、血清免疫グロブリン値および抗原特異的免疫グロブリン値に変化は認められなかった。そのため本年度は、ゾンデによる経口投与開始を2回目の抗原全身感作時とし、経口投与期間をさらに1週間延長する実験を行った。その結果、対照群と比較して抗原20mgを24日間経口投与した群では、結膜炎が抑制されることがわかった。対照群と比較し経口投与群では、血清中の総免疫グロブリン値は変化が認められなかったものの、抗原特異的免疫グロブリン値(immunoglobulin E:IgE)は低下する傾向にあった。脾臓、腸間膜リンパ節およびパイエル板からリンパ球を回収し、フローサイトメトリー法により制御性T細胞の割合を検討したが、差は認められなかった。対照群と比較し経口投与群では、インビトロで抗原刺激を加えた脾細胞および腸間膜リンパ節細胞の各種サイトカイン産生は抑制傾向にあった。
アレルギー性結膜炎を抑制する実験系が確立され、その発症抑制にTh2応答の減弱が関与していると考えられた。今年度の研究で、抗原特異的Th2応答抑制にどのような細胞と分子が関与しているか、とくに制御性T細胞の変化について検討する。そして、これまでの結果をまとめて論文を作成する予定である。
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