経口免疫寛容により既に発症したアレルギー性結膜炎を効率よく抑制するため、抗原感作成立後に経口免疫寛容を誘導する方法を検討した。卵白アルブミンを抗原とし、全身感作、点眼でマウスに誘導した。結膜炎を評価するために、抗原点眼後24時間目の臨床スコアと、摘出した結膜の組織標本をギムザ染色することにより、結膜に浸潤した好酸球数を計数した。経口投与法に関しては1)飲料水に混ぜる、2)ゾンデで投与する、3)餌に混ぜる、の3つの方法を当初は予定していた。飲料水に混ぜる方法はcontaminationの可能性が高いことが判明し、中止とした。ゾンデを用いることにより結膜炎の効果的な抑制を認めたが、餌に抗原蛋白を混ぜる方法では結膜炎の抑制効果は認められなかった。卵白アルブミン特異的IgE、IgG1ともに卵白アルブミンの代わりにPBSを摂取させた群と比較し、明らかな差は認められなかった。また、脾臓、腸間膜リンパ節、パイエル板からリンパ球を採取し、CD4、CD25、Foxp3の発現陽性細胞(制御性T細胞)の比率にも差がみられなかった。 以上の結果から、マウスで卵白アルブミンを抗原として誘導するアレルギー性結膜炎の系で、以下の点が明らかになった。 1)抗原の経口投与により、結膜炎発症が抑制される(経口免疫寛容)。 2)経口投与方法としては従来のゾンデを用いる方法が最も安定して、経口免疫寛容を誘導できる。 3)経口免疫寛容の機序は抗原特異的抗体産生抑制、制御性T細胞の誘導以外の機序が働いている。
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