研究課題/領域番号 |
16K11326
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
永田 真帆 京都府立医科大学, 眼科, 客員講師 (40614102)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | RSPO1 / 角膜 / 炎症 / カルシウム沈着 / 角膜混濁 / Wntシグナル / 創傷治癒 / S100A8/A9 |
研究実績の概要 |
WntシグナルのリガンドであるRSPO1の遺伝子異常家系では両眼性の角膜混濁をおこす。平成28年度までの研究で、RSPO1-KOマウスにおいては、遺伝子異常家系と同様に角膜混濁をおこし、角膜に炎症を惹起させ、創傷治癒を遅延させることを確認してきた。さらにこの角膜混濁は角膜上皮下を中心とした沈着物であり、この沈着物にはカルシウムが含まれることを証明した。またRSPO1-KOマウスの角膜上皮のみを分離し、抽出したRNAを用いて遺伝子解析を行った結果、S100A8およびS100A9の発現上昇を確認した。このS100A8/A9はcalcium-binding proteinの一種で、カルシウムを含んでダイマーを形成する性質があり、また、ある報告ではタイトジャンクションの破綻を生じるということもあり、RSPO1-KOで生じている角膜上皮下および角膜実質浅層への沈着物の発生機序として、タイトジャンクションの破綻により涙液のカルシウムが上皮下にまわり、S100A8/A9と複合体を形成しているのではと考えられた。今年度の研究では、RSPO1-KOマウスより角膜上皮のみを分離してRNAを抽出し、このS100A8およびS100A9の発現について、ワイルドタイプマウスと比較しての相対的発現量をRealtime-PCR法を用いて解析したところ、著明な発現上昇を認め(S100A8は96.90倍、S100A9は141.96倍)、S100A8およびS100A9がRSPO1の発現に大きく関与していることを示唆するものとなった。また間接免疫染色法を用いて、RSPO1-KOマウス角膜でのS100A8及びS100A9の染色を行ったところ、上皮下および角膜実質に生じている沈着部位において陽性であり、S100A8及びS100A9の発現上昇に伴い、タイトジャンクション破綻により涙液より上皮下にまわりこんだカルシウムとともに結合し複合体を形成したものが沈着しているとの仮説に矛盾しないものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RSPO1にまつわる様々な役割が明らかになりつつあり、角膜混濁の原因に近づきつつある。前年度までの大きな発見として、RSPO1-KOマウスにおいての、角膜上皮の網羅的遺伝子解析の結果、calcium-binding proteinであるS100A8とS100A9の大幅な発現上昇が認められた。このS100A8とA9がどれほど発現上昇しているかを検証したところ、S100A8では96.90倍、S100A9では141.96倍というような、非常に大きな差をもって発現上昇していることが確認され、RSPO1の役割の大きな鍵となっていることが改めて示唆された。またS100A8とA9が実際に沈着物に存在していることが免疫染色により確認され、角膜混濁の発生に大きく関与していることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究により、RSPO1-KOマウスにおいては、角膜混濁発生にS100A8及びS100A9が大きく関与していることが示唆された。平成30年度には、さらにこのS100A8およびS100A9-transgenicマウスを用いて、S100A8およびS100A9の発現が上昇した場合に、RSPO1-KOマウスと同様の角膜混濁が生じるかどうかを確認し、RSPO1とS100A8およびA9の関係について、また、RSPO1の角膜における役割について、さらに検証をすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に使用する用途がなく、次年度での物品費にあてることとした。
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