研究課題
IKZF1は、リンパ球の分化に重要な転写因子であることが報告されている。研究代表者は、リンパ球だけではなく、表皮細胞や眼表面上皮細胞(結膜上皮)にも、IKZF1のmRNAや蛋白が発現しており、TLR3のリガンドであるpolyI:C刺激により、その遺伝子発現が著明に上昇することも見出した。また、表皮細胞や結膜上皮などの粘膜上皮に特異的に発現しているケラチン5をプロモーターにして、表皮や眼表面上皮等の粘膜上皮にIKZF1を過剰発現させたマウス(上皮IKZF1Tg)を作成して、解析を行い、その結果、上皮IKZF1Tgは、脱毛を伴う皮膚炎症や、眼表面を含んだ粘膜炎症を自然発症することを見出した。組織学的解析においても、上皮IKZF1Tgの皮膚には、明らかな炎症細胞浸潤を認めた。また上皮IKZF1Tgで、たびたび、眼瞼結膜や口腔粘膜、爪囲に炎症細胞浸潤が認められることも見出した。さらに、上皮IKZF1Tgに、接触性皮膚炎を誘導したところ、野生型マウスと比較して炎症細胞浸潤が有意に増加することも見出した。これは、上皮IKZF1Tgでは、皮膚炎症が重症化しやすいことを示唆している。また、末梢血のT細胞をFASCで解析したところ、上皮IKZF1Tgでは野生型に比べて、Th1(IFN-γ)、Th2(IL-4)の割合が、CD4とCD8の両方で増加していた。また、Th17(IL-17)に関しても、CD4で有意に増加していた。マウスを用いた機能解析の結果、IKZF1は、眼表面を含んだ皮膚粘膜制御に大きく関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変マウスの解析も、遺伝子改変培養細胞を用いた解析も予定通り進行している。
今後は、IKZF1による炎症制御が、そのような因子を介しているのかについて、遺伝子改変マウスを用いた解析する予定である。
遺伝子改変マウスの組織の解析に思った以上に費用が掛からなかったが、今後のIKZF1による炎症制御に関与する因子の同定については、想定以上の費用が掛かることが明らかとなっている。また、最終年度は、国内国外の学会で成果発表を行う予定であり旅費も使用する予定である。
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Allergy
巻: 73 ページ: 395-404
doi: 10.1111/all.13308.