粒子径約100 nmのファスジル内封ペプチド修飾リポソーム(脂質組成:DPPC/Cholesterol/DPPG/APRPG-PEG2000-DSPE=10/5/1/1)を、硫酸アンモニウム法を用い て調製した。BNラットにレーザー照射を行い、実験的脈絡膜新生血管(CNV)を作成し、ファスジルリポソームを点眼後及び結膜下注射後に、眼組織を角膜・水晶体・虹彩毛様体・網膜・脈 絡膜・強膜に分離し、各組織におけるファスジル、水酸化ファスジルの到達量を質量分析法にて定量した。組織抽出液には内部標準物質として、1-[(5-イソキノ リニル)スルホニル]ピペラジンを添加し、珪藻土を用いて液液抽出後、MRM法にて測定した。また、リポソーム脂質層に赤色蛍光を封入し、脈絡膜新生血管の二 重染色を行い、網膜、脈絡膜のリポソーム到達量の分布を蛍光顕微鏡用いて観察した。後眼部における組織ごとの検出量は強・脈絡膜・網膜で認められ、角膜・水晶体では認められなかった。結膜下注射後の方が点眼に比べて後眼部組織への到達量が大きかった。 さらに、CNV作成ラットにファスジル内封ペプチド修飾リポソームを点眼・結膜下注射後、脈絡膜フラットマウントを作成し、CNV組織切片のHE染色行い、CNV組織の大きさを比較した。コントロール群に比べ、ファスジル内封リポソーム点眼・結膜下注射群では、CNV面積が小さい傾向が認められたが、統計学的有意差は認められなかった。 以上より、ファスジル内封リポソームの点眼・結膜下注射はCNV抑制に有効な可能性が示唆されたが、今後さらなる至的条件の検討が必要と考えられた。
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