研究課題
アマクリン細胞および水平細胞特異的にCreを発現するptf1a-Creマウスと、VEGF、VHL、TGF-β、β-カテニンのfloxマウスの血管透過性を調べるため、FITC-BSAをマウスの尾静脈に注入し、注入後30分後にsacrificeし評価した。ptf1a-Creマウスと、VEGF、VHL、TGF-βのfloxマウスは、FITC-BSAをマウスの尾静脈に注入したのちも、血管透過性亢進はみられなかった。ptf1a-Creマウスと、VEGF、VHLのfloxマウスについては、VEGFでは中層の毛細血管の密度が低くなり、VHLでは中層の毛細血管の密度が上昇していた。このように網膜中層毛細血管に形態異常がみられるマウスにおいても、血管透過性亢進はみられなかった。ptf1a-Cre; β-cateninf/fでは中層および深層の毛細血管で選択的な血管透過性の統計学的に優位な亢進がみられた。ptf1a; β-cateninf/fではぶどう膜炎による黄斑浮腫のみならず、糖尿病黄斑浮腫と同様に網膜中層および深層の障害を生じていた。また、ptf1a; β-cateninf/fにぶどう膜炎動物モデルや糖尿病モデルを作成することで、網膜中層および深層の障害が増悪した。アマクリン細胞および水平細胞が網膜内の中層および深層の毛細血管と相互作用し、血管の安定化に寄与する可能性があり、将来的には神経―血管相互作用に着目した観点よりぶどう膜炎のみならず糖尿病による黄斑浮腫を治療することが新規治療法につながる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
ptf1a-Cre; β-cateninf/fでは中層および深層の毛細血管で選択的な血管透過性の統計学的に優位な亢進がみられた。このことは興味深いことに、表層の毛細血管においては、血管透過性亢進はみられなかった。過去にはBarber AJ, et al.(Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005)らおよびAntonetti DA, et al(Diabetes, 1998)らが糖尿病網膜症のモデルマウスであるAkitaマウスにおいて、網膜内毛細血管の透過性亢進を報告しており、これらのマウスと同様のphenotypeを示し、糖尿病黄斑浮腫と同様のphenotypeを示した。そのため、糖尿病黄斑浮腫による視点で解析を行っていったため、ぶどう膜炎動物モデルによる解析が遅れてしまったが、糖尿病黄斑浮腫は、ぶどう膜炎による黄斑浮腫と極めて似ている臨床所見を呈するため、同様のメカニズム解明ができるものと期待される。
難治性眼炎症性疾患の代表であるぶどう膜炎を中心に、その動物モデルマウスおよびヒトぶどう膜炎臨床データと検体を用いて、ぶどう膜炎の病態におけるアマクリン細胞が制御する神経-血管ネットワーク(Neurovascular unit)の意義を解明するとともに、本疾患の新規治療法の開発も視野に入れ、視力予後向上に向けた臨床応用を目的とする。その結果にもとづいて、各種抗炎症薬をぶどう膜炎動物モデルに投与することにより、炎症によって引き起こされる網膜毛細血管の障害(血管透過性亢進や血液網膜関門の破綻)が抑制できるか、個体および細胞レベルで検討する。また、強度近視により網膜が変性するが、ぶどう膜炎における強度近視による割合を調べる。それにより網膜が変性したNeurovascular unitの環境下によるぶどう膜炎の重症度も判定する。
2017年度に請求した試薬が2018年3月までに到着しなかったため当該助成金が生じている。試薬が来次第0円になるように注文している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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