間葉系に属する細胞へ分化する能力を持つ間葉系幹細胞は様々な組織でもその存在の報告がなされており、近年、再生医療でも注目されている。我々はこれまでに、口腔粘膜の上皮下組織から間葉系細胞を分離・培養し、解析を行ってきた。この口腔粘膜由来間葉系細胞は間葉系細胞へ分化するだけでなく神経細胞への分化も可能であり、神経堤関連因子(CD49d、CD56、PDGFRa)の発現も認められたことから、神経堤由来として知られる角膜実質細胞への分化も行ってきた。分化誘導後において角膜実質で特異的なケラトカンも発現することがわかってきた。これらのことから、角膜への応用が期待される。本研究の本年度において、我々は 眼表面疾患モデルにおける細胞治療の効果を調べるため、ウサギ創傷治癒モデルの結膜下に細胞移植を検討した。ウサギ創傷治癒モデルは8mmの生検トレパンを用いてウサギ角膜中央部に上皮欠損を作成した。作成後、MRIコントラスト造影剤として使われているSPION(Supper Paramagnetic Iron Oxide Nanoparticles (Fe3O4:四酸化三鉄))でラベルした口腔粘膜由来間葉系細胞を5.0 x 105 cells / eyeで結膜下に移植を行なった。移植後経日的に観察を行なったところ、培養液を移植したコントロールに比べて口腔粘膜由来間葉系細胞移植した角膜欠損部位では比較的早く創傷治癒が促進されている可能性が認められた。上皮化した眼表面組織において、SPIONを取り込んだ細胞が存在しており、ベルリンブルー染色で検出することできた。また、抗ヒト核抗体を用いた免疫染色においても同様に移植部位に陽性像を観察することができた。以上のことから移植した口腔粘膜由来間葉系細胞は眼表面に生着し、創傷治癒を促進する可能性が考えられた。
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