研究課題/領域番号 |
16K11354
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
下島 直樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30317151)
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研究分担者 |
藤ヶ崎 純子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (60312021)
炭山 和毅 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90385328)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸管神経 / 可視化 / 共焦点内視鏡 / ヒルシュスプルング病 |
研究実績の概要 |
ヒルシュスプルング病(H病)は遠位側腸管における神経節細胞の欠如を本態とする先天性の腸管神経異常疾患で、適切な診断、治療には腸管の生検による正確な病理診断が必要不可欠である。本研究では,共焦点内視鏡(confocal laser endomicroscope, CLE)を用いた低侵襲消化管壁内神経叢のin vivo imaging法を確立し,ヒルシュスプルング病の確定診断と、初期治療や根治手術の際の人工肛門造設部位や切除腸管の範囲を正確に決定するリアルタイム診断システムを構築することを目指している。 1年目となる今年度はヒト腸管切除検体を用いての検討を行った。慶應義塾大学病院および関連病院である東京都立小児総合医療センター外科と共同研究体制をつくり、腸管切除が必要である患者さんに術前に同意を得て、切除検体の一部を研究に使用した。これまでに38症例(H病患者18症例、その他の腸管神経に異常のないコントロール患者20症例)よりサンプルを収集し、そのうち29症例においてCLEによる観察を行った。 方法としては、蛍光色素(cresyl violet)を漿膜面より散布もしくは漿膜下に局注し、CLEで漿膜側より筋層間の神経叢を観察した。H病の無神経節部や移行部においては神経線維束についても観察、記録した。また、CLEによる観察後に組織を固定し、水平連続切片を作成して病理所見を検鏡した。CLEの検鏡と同様に筋層間の神経叢の有無を観察し、さらにH病の無神経節部や移行部では、太い神経線維束の出現についても観察、記録した。 CLE所見と病理所見の対比を行い、統計的な解析をこれまでにH病8例、コントロール11例にておこなった。結果はH病において正診率、感度、特異度がそれぞれ92.6%, 90.5%, 93.9%であり、コントロールではそれぞれ92.9%, 92.3%, 100%と高い精度が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度はヒト腸管切除検体を用いての生体外でのCLE観察と病理所見の対比であった。研究実績の概要で記述したとおり、ヒト腸管切除検体としてH病、コントロールともに十分なサンプル数が集められ、腸管神経の可視化がよい精度で可能である事を示すことができた。コントロール検体におけるCLE所見をまとめて論文化(Kobayashi et al., Gastroenterol Hepatol. 2017)がなされ、現在、H病における所見をまとめている。 また、2年目の計画である実験動物を用いての生体内観察についても、現在、ブタを用いた実験系を準備している。当初は慶應義塾大学病院にある動物実験センターにて実験を行う予定であったが、CLE本体が慈恵医大にあること、慈恵医大でも大動物の実験が可能である事から実験の場所は慈恵医大で行う計画に変更した。下島も慈恵医大の動物実験講習を受講し、慈恵医大での動物実験計画書の共同研究者に入る手続きを済ませている。近日中に実際にブタを用いての生体内観察を具体的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験動物を用いた生体内観察は先述の通り、慈恵医大での動物実験センターにてすでに認可された計画書に基づいてブタを用いた実験を進める予定である。 具体的には実験動物としてはおよそ生後3ヶ月のメスのブタ(体重25-30キロ)を用いる。実験は全て全身麻酔下に行う。まず、内視鏡的観察を想定した実験として、上部、下部内視鏡下に粘膜を切開して粘膜下層に入り、蛍光色素を散布もしくは局注し、CLE観察を行う。また、腹腔鏡もしくは開腹手術時の観察を想定して、実際に開腹して腸管を体外に出し、蛍光色素を腸管の漿膜側より散布もしくは局注してCLE観察を行う。CLE観察終了後は実験動物を安楽死させた後、CLE観察した腸管を採取し病理所見との対比を行いCLEの有用性を評価する予定である。 有用性の評価と共に蛍光色素の生体内使用が全身に与える影響についてもモニタリングする。投与後のバイタルサインの変化や病理学的な異常の出現の有無について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究が順調に進み、当初の計画の目標が予定予算内で達成出来たため、次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は大動物を用いた動物実験を予定しており、その経費に相当額が見込まれる。繰り越した研究費は主に動物実験にかかる経費に充てる予定である。
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