研究課題
最終年度ではサンプルを加えることと、Image Jによる解析方法の改良を行った。以下に研究期間での成果をまとめて示す。ヒトケロイド・肥厚性瘢痕・正常皮膚サンプルを合計24例採取し、二光子顕微鏡による観察を行った。皮膚サンプル内のコラーゲンおよびエラスチン繊維の観察は約250μmの深さまで行うことが可能であった。得られた画像に対し、Image Jによる2種類の解析および幾何学専門家による解析(orientation indexによる解析)を行った。結果:①正常皮膚サンプル中にはエラスチンを豊富に認めたがケロイド・肥厚性瘢痕中にはほとんど認めなかった。②体幹(胸腹部)において正常組織およびケロイドを比較したところ正常組織の方がケロイドに比べ頭尾側方向に配向が強い傾向があることが分かった。また正常組織に比べ、ケロイドの方が繊維の配向性の分散が少ない傾向にあった。③体幹のケロイドの方が耳垂ケロイドに比べ頭尾側方向の配向がやや高かった。また、体幹と耳垂では繊維の配向性の分散に差は認められなかった。④orientation index(OI)の平均値は体幹ケロイド:0.58、耳垂ケロイド:0.58、正常皮膚:0.57であり、補正OIは体幹ケロイド:0.52、耳垂ケロイド:0.45、正常皮膚:0.54であった。考察:①ケロイドや肥厚性瘢痕ではコラーゲンの生成が多いため、エラスチンの生成が進みにくいと考えられる。これが瘢痕の硬さにつながっている。②ケロイドではkeloid bundleと呼ばれる繊維束を形成することがあり、正常組織に比べて繊維配向性の分散が少なくなっていると考えられる。③胸腹部は力学的刺激を受けやすいため、周囲環境の力学的刺激がコラーゲン繊維の配向に影響を与えた可能性が考えられる。
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