研究課題
われわれはこれまでに皮膚の光受容に関する研究を行ってきた。現在までに、哺乳類では網膜の神経節細胞に発現が確認されているメラノプシン(OPN4)がヒト 皮膚に発現していることを組織レベルおよび単離された細胞(線維芽細胞、メラノサイト、ケラチノサイト)において確認した。さらにこれらはセカンドメッセ ンジャーであるGnaqとも共役していることを免疫沈降実験で確認した。本研究課題ではこれらのシグナルトランスダクションがどの程度細胞内において変換さ れ、それらがどのようは表現系を持つのか、ということに焦点を当てている。本年度はこれまで行ってきた実験データの補強を中心に行った。これらの多くが論文投稿に際し査読者からのコメントへの対応となる。まず、免疫染色においては共焦点レーザー顕微鏡により高解像度の蛍光画像を得た。これにより、OPN4が細胞膜を中心に極在化しており、Gnaqはその内側に主に局在することが明らかとなった。また、表皮を構成する細胞マーカー(cytokeratine 5)およびメラノサイトマーカー(Tyrosinase)を用いてOPN4を発現している細胞が明らかにケラチノサイトおよびメラノサイトであることを確認した。なお、OPN4は表皮基底層に多く発現しており、表層ではその発現が乏しくなることが明らかとなった。さらにヒト網膜組織を購入し、これによりポジティブコントロールを得た。次にBmal1およびPer2の発現について、光照射によりサーカディアンリズムが形成されることを示すため、検体数(n数)を増やし、検定を行った。これにより、明らかに青色光(480nm)の照射によりリズムがリセットされることを示した。また、光照射によるカルシウム取り込みがOPN4を介することを間接的に示すため、Gqの特異的阻害薬YM-254890を用いてカルシウム取り込みが阻害されることも示した。