研究課題/領域番号 |
16K11368
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木股 敬裕 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50392345)
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研究分担者 |
海野 直樹 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20291958)
杉山 成史 岡山大学, 大学病院, 助教 (80379776)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / 慢性炎症 / インドシアニングリーン |
研究実績の概要 |
続発性リンパ浮腫患者より組織サンプルを採取し、第一段階として組織学的検討を行った。当研究に際し、新しくインドシアニングリーン(以下ICG)蛍光を利用した組織像観察が可能な顕微鏡システムが構築されたためこれも利用した。臨床においてICGは皮内注射からリンパ管に取り込まれ、リンパ流に沿って移動するため、表層のリンパ流の観察に利用されている。その所見としてdermal back flow(以下DBF)と称されるリンパ液の皮膚表層への逆流、停滞状態を呈する部位から採取した組織に対して、前述の蛍光顕微鏡観察では、真皮乳頭層までICGの分布そのものを実際の顕微鏡像で確認することができた。ICG蛍光のspotとして描出されたそれぞれの部位は、後染色でリンパ管を標的としてプドプラニン、prox1、LYVE-1等の免疫組織染色を行い、末梢のリンパ管として矛盾ないと判断された。同様にH-E染色においては前述のリンパ管周囲に免疫細胞と思われる細胞群の集簇を認めており、慢性炎症の主座である可能性もあり現在詳細を解析中である。また、これら組織像はリンパ浮腫の病期および組織採取の部位(四肢の抹消or中枢、伸側or屈側)によっても異なり、更には、ICG造影所見のDBFも更に数パターンあることが知られている。これらをすべて網羅するために現在継続してリンパ浮腫患者からの組織採取を行っている。 順次組織サンプルの蓄積を待って、今後は慢性炎症、繊維化、脂肪沈着に関与するタンパク発現や遺伝子発現をそれぞれウェスタンブロッティング法やリアルタイムPCR法を用いて解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の開始にあたり、概要で述べたICG蛍光観察顕微鏡の観察手技の確立に若干の期間を要した。また、当初の予定よりリンパ浮腫組織の提供者が増えなかったことが遅れている一つの要因と考えられる。また一部手技が煩雑になるため、後染色等の実作業時間が純増している。 現在、当施設でのリンパ浮腫手術は例年通り高い症例数で推移しており、組織提供者も現在は順調に増加しているためサンプル数については予定数を達成する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
組織学的評価法についてはすでに確立したため、ICG蛍光顕微鏡撮影および各種免疫組織染色によるデータの蓄積を進める。更に今後はタンパク発現および遺伝子発現についての解析を進める方針である。 慢性炎症についてはTNFα、TGFβ1、IL6、繊維化についてはⅠ型・Ⅲ型コラーゲン、筋線維芽細胞、脂肪沈着についてはPPARγ等をターゲットとしてウェスタンブロッティングおよびELISA、リアrタイムPCR等を用いてタンパク、遺伝子発現をそれぞれ解析する。 また比較対象となる正常組織として、皮弁等で余剰となる組織サンプルの採取も並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に想定していた、タンパク発現解析、遺伝子発現解析に必要な各種プローブ・プライマーセットやELISAキット当の高額な消耗品類が、本研究の組織サンプル集積の遅れにより年度中に購入に至らなかったのが主因と思われます。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では本年度で遅れていた組織サンプル採取数が回復し、大量の解析が必要と予想されるため、本年度に使用しなかった分をそのまま、次年度のタンパク、遺伝子発現解析のための消耗品として使用する方針です。
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