研究課題/領域番号 |
16K11371
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
矢吹 雄一郎 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30610357)
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研究分担者 |
武部 貴則 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 教授 (20612625)
前川 二郎 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70244449)
三上 太郎 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (90315804)
小林 眞司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部長 (90464536)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 軟骨前駆細胞 / 前臨床研究 / カニクイザル / 自家細胞移植 |
研究実績の概要 |
平成28年度はカニクイザル耳介軟骨膜中の軟骨前駆細胞の多分化能と未分化性の維持に関する評価を行った。また、独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターへ本研究の実験計画に関する申請を行った。 平成29年度は前述の申請が承認されたため、カニクイザル耳介軟骨前駆細胞の自家細胞移植による有効性評価を中心に行った。具体的には、採取した軟骨前駆細胞を拡大培養し、軟骨分化誘導した。回転培養装置を用いて生体外で軟骨様組織を再構築し、得られた組織をカニクイザル外鼻皮下へ移植し、外鼻形態の変化と再構築組織の組織学的解析を行った。3頭で評価を行った。3頭中1頭の検体から得られた細胞は、増殖不良と分化誘導不良を認め軟骨様組織の再構築はほとんど得られなかった。他2頭においては、生体外で良好な軟骨様組織の再構築を得られた。得られた組織の一部は重量など量的評価と、硬度やグリコサミノグリカン含有量、組織学的解析など質的評価を行った。また、得られた組織の一部は自家移植を行い、術後4ヶ月において評価した。外鼻形態の僅かな変化と、軟骨様組織の再構築を確認した。 また、軟骨前駆細胞を用いた臨床研究に関する申請への準備として、培養工程の標準作業手順書を作成した。 平成29年度までの研究結果の一部は第17回日本再生医療学会総会(2018年3月、横浜)で共同演者として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の実施計画はカニクイザル軟骨前駆細胞の自家皮下移植実験による有効性評価と本学附属病院内セルプロセッシングセンターを利用した臨床研究の申請であった。 本研究において、自家皮下移植手術の有効性とは移植による形態修正効果とその長期形態保持性と考えている。そのため、平成29年度の動物実験においては形態修正効果を評価するため、すでに安全性評価として施行実績があるプロトコールを一部変更して施行した。具体的には、移植部位を組織緊張が少ないため選択していた前額部皮下から形態評価が可能な外鼻へ移植部位を変更した。そのため、概要に記載した通り一定の結果は得ることができたが、十分に有効性が確認できたとは言い難い。また、移植軟骨の長期形態保持性は動物飼育期間や研究期間の問題があり、カニクイザルで評価することは困難で、それらの点において研究の進捗は遅延している。加えて、概要に記載した通り、カニクイザル3頭中1頭においては軟骨前駆細胞の増殖性や軟骨分化誘導に対する反応が不良であり、その個体においては自家皮下移植実験を施行しておらず、データが採得できていない。 臨床研究の申請においては、全工程における標準作業手順書の作成はほぼ完了したものの、補償制度の整備などに時間を要しており、再生医療等委員会への審査申請が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターへ実験計画を提出し審査され、承認が得られている。そのため、平成29年度に十分施行できなかった自家皮下移植実験を再度行う。本研究は前臨床研究としての側面を有しているため、臨床研究を想定したプロトコールで実験を履行することも重要となる。そのため、形態の制御とその評価を重点的に行う。具体的には、培養した軟骨前駆細胞を前額部や腹部皮下へ一旦移植し、それによって得られた再生軟骨を外鼻など形態の評価が詳細に施行可能な部位へ移植する。つまり、二期移植法を一つの条件として加え、他条件と比較検討することを計画している。また、形態の評価に関しても、MRIや超音波検査など複数の方法を併施し、多角的に行う。 また、平成29年度においては前述の通り3頭中1頭の個体から得られた検体と細胞では予定されていた評価は施行できなかった。しかし、ヒトに対して行う臨床研究も同様のリスクを内包しており、増殖性や軟骨分化誘導への反応が不良なケースへの対応と評価、即ちバリデーションが必要となる。そのため、これらを再評価することでより現在想定しているバリデーションの最適化を目指して修正する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 前述の通り、研究達成度はやや遅れている状況にある。具体的には、3頭中1頭への皮下移植実験は施行できておらず、十分な有効性評価ができていない。そのため、検体が想定されていたより少なかったため、予定していた試薬関連の物品費の一部は使用しなかった。実験補助に関連した人件費も同様の理由で使用していない。研究結果の一部は国内の学会で発表した。しかし、未だ課題も多く残されており、国際学会の発表や英文専門誌への投稿へは至っていない。そのため、予定していた旅費の一部は使用しなかった。英文査読や投稿料などその他の研究費も同様の理由で使用していない。 (使用計画) 平成30年度は当初の実施計画とは異なりカニクイザル耳介軟骨前駆細胞の自家皮下移植実験とその有効性の評価を継続する。平成29年度の結果を踏まえて形態評価の手法としてMRIや超音波検査など複数の方法を併施することを計画しており、それらに関わる物品費が平成29年度のそれより必要となる。さらに、得られたデータや組織、プレパラートも非常に多くなりその管理にエフォートを割かなければならないため、短期間でも実験助手などの雇用が望ましいと考えられる。得られたデータの一部は可能であれば学会発表もしくは論文による報告を行うため、それらに伴う旅費および投稿費が必要と考えられ、現段階では次年度使用額はそれらに使用する計画としている。
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