研究課題/領域番号 |
16K11379
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
矢澤 真樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60327567)
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研究分担者 |
森 泰昌 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (00296708)
松原 由美子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (70365427)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生医学 |
研究実績の概要 |
血小板には、止血・凝固作用に加え、含有する複数の成長因子による創傷治癒促進作用がある。現在、患者自身の血小板を濃縮して利用する多血小板血漿が臨床応用されているが、その調整は不安的であり効果も一定ではない。近年、自家細胞をソースとした血小板作成が可能となり、臨床応用に近い素材の1つとして注目されている。われわれはiPS細胞よりも安全に線維芽細胞をソースとした血小板作成に成功し(Matsubara et al. Blood 2012)、止血・凝固作用、マウスでの創傷治癒促進作用を確認してきた。本研究では、自己細胞由来誘導性血小板を臨床応用する疾患の選定とプロトコールの決定、必要な安全性の検証を行い、血小板に含まれる成長因子による、パーソナル治療剤の臨床応用に向けた最終的な検証を目的とする。 平成28年度は、疾患モデル(マウス)における線維芽細胞由来血小板の適応効果判定を行った。免疫不全マウスの疾患モデルとして、糖尿病モデルマウスを使用した。ヒト線維芽細胞由来血小板を大量培養して作成した創傷に投与し、創傷治癒への影響を調査した。この結果、ヒト線維芽細胞由来血小板の創傷治癒能力を判定し、臨床応用の適応疾患選定の参考にする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験では、疾患モデルではないマウスに作成した創傷について、ヒト線維芽細胞由来血小板は高い創傷治癒能力を示した。疾患モデルで作成した創傷においても、ヒト線維芽細胞由来血小板の創傷治癒能力を確認できた。 また、臨床応用に向けて、線維芽細胞由来誘導性血小板に必要な安全性の確認や個体による差異などの検証を行っている。複数の個体(ヒト)から誘導性血小板の大量作成を行うため、再建手術を受ける患者の余剰となった脂肪組織を利用して誘導性血小板の大量作成をしている(倫理委員会承認済)。細胞ソースとなった個体毎に、作成された誘導性血小板に差がないか、安全性についても、次世代シーケンサーで突然変異の有無を調べている。
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今後の研究の推進方策 |
各モデルにおいて、ヒト線維芽細胞由来血小板の投与方法を検討し、最も効果的な投与方法を探ることで、臨床応用する際のプロトコールするための根拠とする。 ヒト線維芽細胞由来血小板の濃度、投与期間と間隔、併用人工材料の有無など、臨床応用を前提とした様々な適応方法を検討し、最も効果的な投与方法を検討する。 ヒト線維芽細胞由来血小板の創傷治癒能力を臨床応用する際に、どの投与方法が最も適しているか、適応プロトコール選定の根拠とする。 また、臨床応用に向けて、線維芽細胞由来誘導性血小板に必要な安全性の確認や個体による差異などの検証を行い、パーソナル治療薬の開発を行う。 これまでと同様、複数の個体(ヒト)から誘導性血小板の大量作成を行うため、再建手術を受ける患者の余剰となった脂肪組織を利用して誘導性血小板の大量作成を行う(倫理委員会承認済)。細胞ソースとなった個体毎に、作成された誘導性血小板に差がないか、年齢・血型・HLA等による影響の有無を調査する。引き続き、安全性について、次世代シーケンサーで突然変異の有無を調べる。誘導性血小板の創傷治癒能力と安全性の確立後、臨床応用をすすめるとともに、自己細胞由来成長因子によるパーソナル治療剤の臨床応用法の確立(作成法・保存法・適応など)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品購入に充てる予定である。
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