血小板には各種成長因子が多く含まれており、止血・凝固作用後の傷において、これらの成長因子が複合的に働き、創部の創傷治癒過程で大きな寄与をしていることが分かっている。しかし、その調整は患者毎に不安定であるため、期待される効果も予測不能であり確実ではない。そこで自己細胞由来誘導性血小板を作製してパーソナル治療剤の開発に繋げる本研究を行った。 脂肪前駆細胞では、血小板分化誘導基礎培地のみで培養が可能で、iPS細胞やNE-E2遺伝子導入線維芽細胞に比し非常にシンプルな培養法で作製可能のため細胞ソースとして非常に利便性が高いと考えられ、早期臨床応用可能な作製血小板のソースとして適していると考えた。臨床応用を目指す誘導性血小板の検討を進めるため、患者脂肪組織検体から血小板作製を試みたところ、脂肪前駆細胞から作製した血小板は、創傷治癒に有効性を示すサイトカインを含有し、刺激による活性化能を有していた。さらに、免疫不全創傷治癒モデルマウスを用いた検討を行い、効果を確認できた。 そこで、臨床応用を目指す上で、脂肪細胞由来誘導性血小板の生産ラインと品質確保の確立を行った。これまでの担癌患者さんの健康部位からの脂肪提供ではなく、健常人からの脂肪提供による脂肪前駆細胞をソースとするための材料の供給ルートを開発した。臨床応用へ適応する際のプロトコール検討を行なうと同時に、臨床治験での創傷治癒評価法の検討も行い、新規に創傷治癒の評価方法を開発する必要性から、臨床研究として立案し、倫理委員会を通して、臨床研究をスタートさせた。 今後、健常人の脂肪をソースとする自己細胞由来誘導性血小板の安定供給が得られたら、これに含まれる成長因子によるパーソナル治療剤の開発を目指す。
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