研究課題/領域番号 |
16K11384
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
大西 清 東邦大学, 医学部, 教授 (30194228)
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研究分担者 |
岡田 恵美 東邦大学, 医学部, 准教授 (50318242)
赤坂 喜清 東邦大学, 医学部, 教授 (60202511)
荻野 晶弘 東邦大学, 医学部, 講師 (70385657)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Fibrocyte / bFGF |
研究実績の概要 |
修復組織の線維化に重要な線維芽細胞は骨髄由来間葉系前駆細胞 Fibrocyteから由来することがin vitroで証明されたが、in vivoにおけるFibrocyteの機能は不明な点が多い。血管増殖刺激因子bFGFによる人為的な血管新生の促進過程でFibrocyteの発現性を解析し、血管内皮前駆細胞との比較検討から、同細胞による新たな血管新生メカニズムを検証した。方法はSprague-Dawley ratに全層性皮膚潰瘍を作成し、創部にbFGF(10ng/cm2)もしくはVEGF-A(1μg/cm2)を投与後、経時的に創部の肉芽組織を採取し検討した。この血管新生過程でbFGF誘導性CD34+/procollagen I+ fibrocyteによる明らかな血管様構造の発現増加を認めた(p<0.05)。VEGF-A投与創ではCD34+/procollagen I+ fibrocyte による血管様構造が確認できなかった。一方CD34+/Flk-1+血管内皮前駆細胞は、VEGF-A投与創において有意な増加し(p<0.05)、形態的には新生血管に集簇しているのが確認できた。bFGFにより誘導されるCD34+/procollagen I+ fibrocyteは新生血管を構成し、血管内皮前駆細胞とは異なるメカニズムにより血管新生へ関与することが示唆された。さらにFGFR1 mRNAノックダウン実験ではCD34+/procollagen I+ fibrocyteと血管様構造の減少による有意な阻害効果が確認された。したがってbFGFは CD34+/procollagen I+ fibrocyteを特異的に誘導し、同細胞による血管新生への直接的関与からFibrocyteによる新たな血管新生メカニズムが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット皮膚の正常修復過程におけるFibrocyte発現解析の実験系を確立した。またbFGFもしくはVEGF-A投与による皮膚修復過程におけるFibrocyte発現解析の実験系を確立した。血管内皮前駆細胞とは異なるFibrocyteによる新たな骨髄細胞を介した血管新生メカニズムを証明した。
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今後の研究の推進方策 |
bFGFによる皮膚の血管新生過程では、Fibrocyteの直接的関与を証明した。今後はFibrocyte 移植による新規の血管新生療法開発のため、皮膚潰瘍修復組織からFibrocyte単離とその増幅法の検討を行う。最適培養法から単離増幅されたCD34+/procollagen I+ fibrocyteをラット皮膚潰瘍へ移植し、血管新生能や組織修復能の変化を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に皮膚潰瘍修復組織からFibrocyte単離とその増幅法を開発するため、コラーゲンゲルの回旋培養によるFibrocyteの単離増幅を検討する予定である。高額な振幅器や培養試薬を購入する必要があるため、本年度の予算の一部を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
bFGF調整したラット潰瘍創肉芽組織サンプルを細切したのち、フローサイトメトリー装置を用いてCD34+/procollagen I+ fibrocyteを同定する。Fibrocyte単離精製を行うため、実験動物(SDラット、日本クレア社)やCD34抗体(Abcam, ab150060)、Collagen TypeⅠ抗体(Santa Cruz, sc-59772)他試薬、ウシ型コラーゲンを含む回旋培養に必要な培地や培養器具を購入する予定である。単離増幅されたCD34+/procollagen I+ fibrocyte をラット皮膚潰瘍へ移植し、その発現様式をReal-time PCR法を用いて検討するため、RNA抽出用の試薬等も購入する予定である。
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