本研究の背景として、頭蓋縫合早期癒合症術後の再手術率をいかに減らすかである。再手術の原因は大きく二つあり、1顔面及び頭蓋の変形の残存、2縫合部の再癒合による頭蓋内圧の上昇である。本研究では主に上記の2に対して、野生型およびTwist1ヘテロ接合マウスにおいて冠状縫合を切除したSuturectomyモデルを作成し、縫合切除部にFGF2を作用させて、再癒合を抑制することを目的としている。 本研究の前半は、マウスのSuturectomyモデルの作成と、参考データとなるWTおよびTwist1ヘテロ接合マウスの成長データを取得し、後半は作成したモデルマウスにFGF2を作用させ、再癒合の抑制およびFGF2の骨分化に対する影響を観察した。 Twist1マウスのモデル作成に先立ち、WTにおいてSuturectomyモデルの作成が可能であることを確認した。同時にTwist1ヘテロ接合マウスを受精卵より戻す作業を行った。初年度に本工程が必要であったため、研究期間を1年延長する必要が生じた。次にWTおよびTwist1ヘテロ接合マウスの成長データを採取した。さらにSuturectomyモデルマウスについてFGF2を作用させるに至った。 結果:マウスの成長において、2次元及び3次元画像を用いた解析を行った。このデータはFGF2を作用させたマウスとの比較用のデータとなるが、WTマウスとTwist1ヘテロ接合マウスにおいて、癒合の早期から有意に形態の変化を示すことが分かり、この結果は顔面や頭蓋の変形の進行と残存を予測するうえで重要であると考え、現在Plastic and Reconstructive Surgeryに投稿し、査読中である。SuturectomyモデルについてはFGF2の濃度や作用させる期間にばらつきがあり、現在研究を継続中である。条件設定が完了しデータが得られ次第論文投稿予定である。
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