研究課題
我々の開発した端側型神経移植によるループ型の顔面神経再建方法は複数の研究者によって追試されその有用性が確認されており、ハイブリッド化人工神経は自家神経の成績に匹敵または凌駕する技術として期待され既に多数の報告がある。この両者を組み合わせるべくポリグリコール酸チューブにⅠ型コラーゲンを組み合わせた人工神経に、細胞成分を含まない組織液や薬液を含まないゼラチン、bFGF徐放性ゼラチン、脂肪組織由来由来幹細胞(ADSC)などの添加を試み、人工神経に対する側孔の作成、縦または横方向の割の作成を試みるとともに、臨床において神経欠損症例に対する人工神経を用いた神経再建術を行った。人工神経に対するゼラチン等の添加および神経再建方法には一定のノウハウを得た。顔面神経欠損に対する端側型神経移植術の成績は良好であったが、人工神経の使用に適した症例はなく、顔面神経再建における標準的な神経採取部である腓腹神経の欠損に対する人工神経使用例においては、良好な知覚回復が得られ、露出や感染など局所の合併症も認められなかった。顔面神経欠損に対する神経再建に加えて、眼瞼おほび口周囲の麻痺に対する大腿筋膜や耳介軟骨を用いた静的再建術を組み合わせることによる満足すべき機能回復が確認された。いずれの症例も長期にわたる経過観察を行う予定である。ハイブリッド型人工神経としては、自家神経片を人工神経内に埋入する方法も報告され、有用と思われる。人工神経に対する付加の方法は共通する部分も多いため、今後は比較対象として検討するべきであり、顔面神経および腓腹神経の欠損に対して双方の効果を分析したい。また、人工神経の使用方法に関しては、自家神経の接合部を保護する材料としての検討も行っている。
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Facial Nerve Research
巻: 38 ページ: 63-66