研究課題
I. 急性期侵襲病態患者および健常者における末梢血中Muse細胞とその多能性幹細胞機能を検討すること:これまで明らかにされていない健常者に注目して末梢血Muse細胞動態とその特性を検討した。1)サイズと細胞数:健常者新鮮末梢血を用い,フローサイトメトリーにて多能性細胞特異的マーカーであるSSEA-3陽性細胞を同定した.共焦点レーザー顕微鏡により観察したところ,細胞サイズは10.1±0.3μmであり,従来報告されてきた組織由来Muse細胞よりも小さいことを明らかにした.さらに末梢血SSEA-3陽性細胞数は,単核球当たり0.04±0.003%と少数であった.2)細胞表面抗原とIn vitro特性:組織由来Muse細胞の大部分はCD105陽性であるが,本研究において同定した末梢血SSEA-3陽性細胞では,CD105は約22%と発現が低く,CD45は100%陽性であり,CD19は約85%発現していた.In vitroにおいては,接着性や増殖力が低く,接着培養による拡大ができなかった.多能性に関しては、定量PCRによるNanog,Oct3/4およびSox2などの多能性因子遺伝子発現解析により,末梢血SSEA-3陽性細胞は多能性因子を実質的に高レベルで発現しているこを明らかにした.末梢血中にはこれまでの組織由来Muse細胞と異なる特性を有する,“末梢血Muse細胞”という新規Muse細胞サブタイプが含まれている可能性があることが示されている。II.心肺停止蘇生後、敗血症、重症外傷などにおけるヒストン、HMGB-1, mt-DNAを中心としたalarminsに注目した病態解析を施行した。心肺停止蘇生後患者および敗血症患者において、これらのalarminsには臨床的重症度スコアやDICスコアとの相関を認め、転帰とも関連する可能性があり、その役割を明らかにしつつある。
3: やや遅れている
敗血症患者におけるMuse細胞動態とその多能性幹細胞機能および臨床病態との関係を明らかにすることを目的として、敗血症患者におけるMuse細胞の血中動態評価と再生細胞としての多能性評価、炎症および免疫学的特性を検討することを予定した。しかし、敗血症患者末梢血をにおけるMuse細胞の同定、単離等が困難であることから、これまでに十分な評価の行われていない“末梢血Muse細胞”を明らかに、その特性を解明すべく研究を行っている。そのため、予定した十分な研究進捗が得られていないものの、“末梢血Muse細胞”という非常に重要な知見を得つつある。
現在までの進捗と成果に基づき、以下のように研究を推進することとする予定である。1)健常者の末梢血中に存在する現在までの進捗と成果に基づき、“末梢血Muse細胞”という新たな表現型のMuse細胞の存在を明らかにし、その特性を明確にすること2)1)の知見に基づき、敗血症や重症外傷患者における“末梢血Muse細胞”動態を解析すること3)急性期侵襲病態におけるalarminsの動態と役割を検討し、“末梢血Muse細胞”との関連を解析すること
(理由)研究計画の変更に伴い、少数の健常者を対象としての詳細な検討を実施したため、研究分担者研究室所有の機器による検討が中心であった。このため、消耗品を含めて購入予定した物品などが減少したことによる。(使用計画)次年度、変更した研究計画に基づく臨床検体の解析と評価、データ収集と解析を予定している。そのための消耗品、データ収集解析機器およびソフトウエアなど、本研究事業に必要な物品の購入と論文作成に関わる支出を予定している。
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