研究課題/領域番号 |
16K11404
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
井上 一由 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (10624413)
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研究分担者 |
森松 博史 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30379797)
清水 裕子 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (80423284)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ALI/ARDS / 出血性ショックモデル / デクスメデトミジン / 保護効果 / glycocalyx |
研究実績の概要 |
本研究は、ショック早期より投与する鎮静剤がALI/ARDSの新しい治療的戦略となることを、出血性ショックモデルを用いて分子細胞レベルのメカニズムの解明し臨床応用できるかどうかを検討することを目的としている。本研究計画は平成28年度から30年度の3年間とし、平成29年はラットALI/ARDSモデルにおいて、デクスメデトミジンのALI/ARDS発症に対する保護効果のメカニズムを、内皮細胞のglycocalyx障害として検討を行った。 平成28、29年の結果として、出血性ショック蘇生ラットを晶質液で蘇生することによりALI/ARDSが発生し、デクスメデトミジンを投与することにより、蘇生ラットでの肺の炎症性メディエーターtumor necrosis factor-a (TNF-a)、inducible nitric oxide synthase (iNOS) mRNA 遺伝子発現の増強の低下、肺水腫の指標であるWet/Dry ratioの改善、 HE染色による組織所見では炎症細胞の集積、浮腫、出血などの肺傷害の所見の改善が得られることが分かった。これらの結果より、出血性ショック後の晶質液による蘇生によりALI/ARDSが発生し、鎮静剤であるデクスメデトミジンを投与することによりALI/ARDSが改善することが確認できた。このことは、現在集中治療領域のみで使用されるデクスメデトミジンの投与が、救急蘇生時にも安全に使用できる鎮静剤であり、救急蘇生時より使用することにより、蘇生後ALI/ARDSの改善を期待できうることが考えられた。しかしながら、デクスメデトミジンの保護効果のメカニズムとして、内皮細胞のglycocalyx障害の指標であるシンデカン-1について検討を行ったが、肺組織における局在について結果が得られずさらなる検討が必要であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット出血性ショック蘇生後ARI/ARDSモデルにおいて、晶質液による蘇生によりARI/ARDSが発生し、デクスメデトミジンの抗炎症効果、肺保護効果は明らかにできたが、そのメカニズムについては明らかになっていない。
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今後の研究の推進方策 |
デクスメデトミジン投与による保護効果のメカニズムについて、ラット出血性ショック蘇生後ARI/ARDSモデルにおいて、透過型電子顕微鏡を用いた組織評価、血液中のヘパラン硫酸とシンデカン-1をELISAを用いて計測、肺組織でのシンデカン-1 mRNA 遺伝子発現等により検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、H29年度に終了予定であったデクスメデトミジンがALI/ARDS発症に対する保護効果のメカニズムを、H30年度に継続して行っているため、使用予定の試薬代等がH30年度に持ち越された。 使用計画として、H30年度は、平成29年度に引き続いてデクスメデトミジンがALI/ARDS発症に対する保護効果のメカニズムについて検討を行う。内皮細胞のglycocalyx障害として検討し、障害の評価として透過型電子顕微鏡を用いた組織評価、血液中のヘパラン硫酸とシンデカン-1をELISAを用いて計測、肺組織でのシンデカン-1 mRNA 遺伝子発現を用いて検討する予定である。
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