研究課題/領域番号 |
16K11410
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
垣花 泰之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20264426)
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研究分担者 |
安田 智嗣 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (80437954)
山口 桂司 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (50377280) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | NIRS / TRS / cardiopulmonary arrest / encephalopathy / scattering coefficient / cerebral SO2 / MRI |
研究実績の概要 |
本年(平成29年)度の研究目的は、昨年(H28年)度に完成したモデルを用いて、近赤外線分光法(NIRS)の蘇生後脳症に関するモニタリングの有用性を検討することである。<方法>全身麻酔下のブタ (10-13kg)を用いて、NIRS のプローブを頭皮に装着後、交流を通電し心室細動による心停止を誘発した。心停止状態を5分間維持した後、人工呼吸と胸骨圧迫を開始し5~10分間の心肺蘇生を行い、電気的除細動により自己心拍を再開させた。脳酸素状態の変化は、NIRS(ピコ秒パルス光:759 nm, 801 nm, 837 nm)を用いて連続的にモニタリングし、蘇生後脳症はMRIにて評価した。<結果と考察>心停止の間、脳酸素飽和度(ScO2)は最低レベルまで低下したが、胸部圧迫開始に伴い徐々に増加し、心拍再開後も上昇が認められた。脳酸素状態を、次の2つの解析法、(1)時間に依存しないmodified Beer-Lambert law (MBL)と(2)光子拡散理論に基づく時間分解分光法(DT)を用いて解析したところ、興味ある結果が得られた。DTで解析すると心拍再開直後の総HbとScO2は上昇を示したが、MBLで解析すると一過性の有意な低下を認めた。頭皮を剥いで直接頭蓋骨にプローブを装着すると、DTとMBLの解析法による違いは消失し、心拍再開直後の総HbとScO2の一過性低下は認めなかったことから、解析法(MBLとDT)により測定領域が異なり、MBLではより浅い領域(特に頭皮)を検出している可能性が示唆された。一方、NIRSの散乱係数の変化と、MRI のT2画像所見による蘇生後脳浮腫の有無を検討したところ、脳浮腫発症例では散乱係数の減少が認められていた。このことから、µs’の変化をモニタリングすることにより脳浮腫発症を検出できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度の目標は、昨年(H28年)度に完成したモデルを用いて、近赤外線分光法(NIRS)の蘇生後脳症に関するモニタリングの有用性を検討することであった。その中で、NIRSの解析法の違い(DT法とMBL法)により測定深度が異なる可能性が判明した。そのため、2つの解析法を同時に用いることで、心停止および蘇生後における脳内変化の病態がより詳細に解明できる可能性が示唆された。また、蘇生後脳症が発症すると、NIRSの散乱係数に変化が認められることが判明した。研究の成果としては、H29年度の目標は達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(H30年度)は、ブタの蘇生後脳症モデルを用いて、NIRSの変化と核磁気共鳴スペクトロスコピー 法(MRS)および MRI の画像で同時に評価する予定である。特に、脳浮腫を発症しやすい窒息性心停止モデルを追加し、NIRSによる脳内酸素化状態の変化や散乱係数の変化と核磁気共鳴スペクトロスコピー 法(MRS)および MRI の画像、病理解剖による脳組織の変化と比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度後半はNIRS装置による検出アルゴリズムの構築を中心に行ったため、動物実験を行うための費用であった金額(450,745円)を翌年度に繰り越すこととなった。延期した動物実験は翌年度に行う。 翌年度使用額合計は約155万円であり、動物実験費用、解析費用、学会発表のための旅費、その他(輸送費、検査外注費用など)として使用する。
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