研究課題/領域番号 |
16K11411
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
成松 英智 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70295343)
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研究分担者 |
沢本 圭悟 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10597529)
石黒 雅敬 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30404586)
高橋 和伸 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40530605)
高田 幸昌 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70530608) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 硫化水素 / 脳保護 / 急性中毒 / 海馬スライス / シナプス伝達 |
研究実績の概要 |
平成28年度<海馬CA1-pyramidal cellにおけるシナプス伝達に対する硫化物イオンの影響> 平成28年度は,海馬スライスCA1-pyramidal cellにおけるシナプス伝達に対する硫化物イオン(S2-)の影響を検証した.Multi electrode alley systemを使用した細胞外電位同時多点記録法を用いて,樹状突起上のEPSPを反映するfield EPSP(以下,fEPSP)および神経細胞体上の活動電位を反映するpopulation spike(以下,PS)を同時記録し,これらをシナプス伝達変化の指標として解析した.硫化水素の生体作用はその電離による硫化物イオンに起因するため,生体への硫化水素吸入による硫化物イオン生成状態を再現する目的で,人工髄液に硫化ナトリウム(以下,Na2S)を溶解させた. Na2S(10分間投与)は100 microMおよびそれ以下の濃度(1および10 microM)ではPSおよびfEPSPに有意に影響しなかったが, 300 microMではそれらを部分的(40-50%程度まで)かつ可逆的に抑制し,また1000 microMでは完全かつ不可逆的に抑制した.これらの成績は,in vitro硫化水素中毒モデルにおける中枢神経系シナプス抑制(ラットモデル)について,1) その閾濃度が100 microM台(100-300 microM間)に存在すること,2) 無抑制から完全抑制までの濃度域が10倍以内の狭い範囲であること,また3) 完全抑制に至る濃度では影響の可逆性が失われること,を示す. またこれらの成績から,平成29年度以降に行う硫化物イオンの脳組織保護作用検証には,影響の可逆性が確認されたNa2S濃度である 100 microM(抑制なし)および300 microM(部分的抑制)を使用することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間初年度である平成28年度は,海馬CA1-pyramidal cellにおけるシナプス伝達に対する硫化物イオンの影響を検証し,今後の研究のコントロールとなる基本データを得ることができた.Multi electrode alley systemを用いた電位同時多点記録や次年度以降に向けての実験モデルの作成・安定化,等も順調である.おおむね予定通りの進捗状況である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の実験結果で良好な基本データが得られたため、平成29年度は海馬スライスCA1を用いて,先ず1)2次性脳障害モデル(グルタミン酸脳損傷モデル)に対する硫化物イオンの脳保護作用の解明,次に同様に2)低酸素非虚血脳障害モデル(低酸素性脳損傷モデル)に対する硫化物イオンの脳保護作用の解明を進めていく.また海馬スライスCA1同様に,脳幹スライス呼吸中枢(pre-Botzinger complex)の自発発火に対する硫化物イオンの基本的影響の検証を進めていく.平成30年度以降は,上記以外の脳障害モデル(脳虚血,低血糖,高体温,低体温,等)を用いた研究を進めていく.グルタミン酸脳損傷モデル,低酸素性脳損傷モデルおよびpre-Botzinger complexの自発発火のコントロール記録はすでに安定化している.
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