研究課題
令和5年度<脳損傷モデルに対する硫化物イオンの影響,追加実験と総括>令和5年度は追加実験,データ整理,総括,論文作成を行なった.細胞外電位同時多点記録法(MEA system)を用いて,樹状突起上のEPSPを反映するfield EPSP(以下,fEPSP)および神経細胞体上の活動電位を反映するpopulation spike(以下,PS)を同時記録し,シナプス伝達変化の指標として解析した.生体の硫化水素吸入による血漿中S2-を再現する目的で,人工髄液に硫化ナトリウム(以下,Na2S)を溶解させ灌流した.コロナによる研究遅延の影響もあり研究期間が長期になったため,実験条件・環境の微妙な変化による影響を考慮し各プロトコルでの追加・再現実験を行なったが,いずれの条件でもこれまでと一致する成績が得られた.[結果総括]虚血(1次性脳損傷)モデル,グルタミン酸(2次性脳損傷)モデルの場合ともに,Na2Sを介入前から介入中にかけて投与した群(前投与群)およびNa2Sを介入終了後に投与した群(後投与群)ではNa2Sは脳保護効果を示したが,同時投与群では両脳損傷モデルでともに増悪を示した.Na2Sの脳保護効果は単独でシナプス伝達抑制を示さない100mMや可逆的抑制を示す300mmで確認された.これらの成績は,1) Na2Sは1・2次性脳損傷によるシナプス伝達障害に対して保護効果があること,2) その効果は前投与および後投与では有効だが,同時投与では逆にシナプス伝達障害を増悪させること,3) Na2Sの脳保護効果はその単独作用における可逆的抑制濃度以下で発現すること,を示す.
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