研究課題/領域番号 |
16K11428
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
芝本 利重 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90178921)
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研究分担者 |
九田 裕一 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50566916)
谷田 守 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (70512309)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | anaphylactic shock / angipoietin-2 / vascular permeability / edema |
研究実績の概要 |
本研究の目的はアナフィラキシーショックにみられる血管透過性亢進のメカニズムにangipoietin(Angpt)-2が関与しているかどうか、マウスを用いて遺伝子操作を含めた様々な実験手法を駆使して明らかにするものである。前年度は遺伝子改変に適したC57BLマウスを用いて、アナフィラキシー低血圧に伴う血管透過性亢進モデルを確立した。さらに、そのモデルにおいて経時的に血漿Angpt-2濃度をELIZA法により測定したが、抗原投与前後で変化のないことが判明した。 今年度は、前年度に得られたnegative dataがマウスのstrainの差による可能性によるものか、BALB/cマウスで検討した。始めに、C57BLマウスで確立した血管透過性亢進モデルと同じ実験モデルをBALB/cマウスで確立した。血漿Angpt-2濃度は前年度では抗原投与後3分の投与直後の測定が欠落していた点を補いながら、抗原投与前と抗原投与後の3分、10分、20分に測定した。その結果、血漿Angpt-2濃度は抗原投与後のいづれの時点においても抗原投与前値と有意な差を認めなかった。さらに、もしAngpt-2が組織の内皮細胞から放出されるのであればその組織中Angpt-2含有量が減少すると考えられる。それを検証するため、抗原投与により血管透過性亢進が確認された臓器である小腸、骨格筋、腸間膜、腎臓のAngpt-2量をWestern blot法により、抗原投与前、投与後3分、10分、20分に測定した。しかしながら、検討したすべての組織において抗原投与後のAngpt-2量は抗原投与前と比較して有意な差異を認めなかった。以上の成績は統合するとマウスのアナフィラキシー低血圧では血管透過性亢進は認められるものの、Angpt-2は放出されず、マウスにおいてアナフィラキシーによる血管透過性亢進へのAngpt-2の関与はないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は前年度の結果である、C57BLマウスのアナフィラキシー低血圧にともなう血管透過性亢進時にはangipoietin(Angpt)-2の血中濃度が変化しないことを、他のstrainの異なるBALB/cマウスで確認した。さらに、血管透過性が亢進した組織中のAngpt-2をWestern blot法により測定して、組織中Angpt-2濃度が抗原投与により変化しないことが明らかにした。以上より、アナフィアラキシー時に血管透過性は亢進するが血中ならびに組織中のAngpt-2濃度が変化しないことより、Angpt-2の放出が見られないことを明らかにした。前年度の結果を踏まえて着実に新知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間の研究でマウスのアナフィラキシー低血圧時にはangipoietin(Angpt)-2の放出がみられないことが明らかとなった。さらに、初年度では麻酔下ラットでも抗原投与後の30分以前には血漿Angpt-2濃度の上昇がみられないが、30分と60分と時間が経過すると非感作ラットとともにその濃度上昇がみられた。しかしながら、それ以降のAngpt-2の動態について不明であり、結論が得られていない。 そこで、次年度は、より長期的観察が可能となる麻酔の影響を除いた無麻酔ラットで検討する。すなわち、初期の変化とともに、60分以降の抗原投与後、2時間、6時間、24時間の血漿Angpt-2濃度を抗原の感作ラットと非感作対照ラットにおいて検討する。また、その結果、アナフィラキシー低血圧ラットで有意な血漿Angpt-2濃度上昇が認められればAngpt-2の放出を抑制するexocytosis inhibitorを前処置して、Angpt-2の放出の有無を確実なものとする。
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