研究計画では「学校版医療緊急時対応指針」を作成し、教育コースで指針を評価する予定であった。しかし、心停止を想定したシミュレーションを含む教育コースを指針作成に先んじて実施することにより、医療緊急事案発生時に必要な行動について教員自らが気づき、自校の課題を効果的に抽出できることが明らかとなった。これにより、より実効的な対応指針作成が可能になると判断し、最終年度は医療緊急時対応指針作成に最低限必要な項目を教員らが確実に気づけるようにシミュレーションを構成し、尼崎市内の9つの公立中学校で実施した。 各校において心停止を想定したシミュレーションを実施し、医師、救命士、消防署職員と教員合同で振り返りを行い、自校の医療緊急時発生時の対処法や課題を抽出した。課題は「環境・資器材等」、「傷病者対応」、「消防対応」、「保護者対応」、「情報収集」、「統括連携」、「その他」の大項目に分け、各々について教員が気づくべき項目を3~5項目程度事前に用意し、ファシリテーターがディスカッションを展開した。研修後、各校の養護教諭がディスカッションを総括し、自校独自の医療緊急時対応指針を作成した。 本研究成果は2019年5月に日本臨床救急医学会(和歌山県)で発表し、尼崎市養護教諭研修会中学校部会、尼崎市学校保健会総会、伊丹市養護教諭研修会にて講演した。また、尼崎市内の公立中学校17校中16校で上記研修を修了し、その成果を学校側からの視点で今年度の夏に開催予定の第42回近畿学校保健連絡協議会において中学校の代表(養護教諭)が発表予定である。 尼崎市での取り組みは学校における心停止について先進的な取り組みがなされているとの評価を得て、総務省近畿管区行政評価局第5評価監視官室が「学校における救命活動に関する調査―AEDの使用を中心として―」の報告書(令和2年3月)において本研究の概要と成果について報告された。
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