研究課題/領域番号 |
16K11441
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
長塚 仁 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70237535)
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研究分担者 |
中野 敬介 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10325095)
辻極 秀次 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70335628)
山近 英樹 岡山大学, 大学病院, 講師 (10294422)
高畠 清文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (70736537)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腫瘍転移 / 骨髄移植 / 免疫組織染色 |
研究実績の概要 |
腫瘍はサイトカインやエクソソームなど様々な因子を放出し、全身的に多彩な影響を及ぼすことが知られている。特に骨髄由来細胞は、腫瘍の影響を受け、転移の促進や腫瘍免疫の抑制などに関与することが報告されている。また、腫瘍の転移が成立する以前に、遠隔臓器では前転移nicheと呼称される微小環境が形成され、それを足場に腫瘍の転移が成立すると考えられている。本研究では、腫瘍を移植したマウスの臓器を摘出し、骨髄由来細胞の局在を組織学的に検討することで、腫瘍の転移と骨髄由来細胞の関係を明らかとする。 平成29年度はC57BL6jマウスに、LLC (Lewis lung cancer マウス肺癌細胞)を尾静脈より移植し、転移モデルマウスを作製した。腫瘍移植後、4週目にマウスを屠殺し、全身の臓器を摘出して腫瘍の転移の有無を調べ、転移の成立している臓器を高転移臓器、転移の成立していない臓器を低転移臓器と定義した。LLC細胞においては、肺と肝臓が高転移臓器、腎臓は低転移臓器であることが明らかとなった。 さらに、GFP骨髄移植マウスにLLC細胞を背部皮下に移植し、4週後に臓器摘出、標本作製を行い、免疫組織科学的に観察を行なった。転移が成立する前の状態でも、高転移臓器では低転移臓器に比べ優位にGFP陽性細胞が増加し、多彩な細胞が浸潤していた。これらのことから、骨髄由来細胞が前転移nicheの形成に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LLC細胞の転移モデル作製により、転移が成立しやすい臓器と転移がしにくい臓器の選別を行うことができた。これにより、両者を比較することで転移に際しどのような現象が起こっているかを検討することが可能となり、前転移niche形成のメカニズムの検討に応用することが可能となった。 また、高転移臓器では、骨髄由来細胞が多数観察され、前転移niche形成に骨髄由来細胞が関与することが示唆された。このことから、腫瘍の転移に骨髄由来細胞が関与することが明らかとなり、概ね順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
高転移臓器に浸潤している骨髄由来細胞のプロファイルを明らかとしていく。特にH28年度に見出された、CD31陽性骨髄由来細胞の前転移nicheの関係に注目し、免疫組織科学的手法やFACSなどを用いて、研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
腫瘍転移モデルマウスの確立が想定を上回って成功したため、当初計画していた予算より少ない額で研究を行うことができた。よって、余剰分を次年度の目的細胞の細胞学的性格の調査に用いる、免疫染色の抗体や、FACSに用いる抗体、動物・消耗品の購入にあてる予定である。
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