研究実績の概要 |
本件ではこれまでに、骨芽細胞由来基質小胞(MV)およびそれに包含されることが明らかとなったmiRNA-125b(miR-125b)が骨転移性がん細胞(MC-7、MDA-MB-231、PC3およびPY8119細胞)の増殖能・遊走能・浸潤能の少なくともいずれかを抑制することをin vitroにて確認した。また、ヒトオステオカルシンプロモーター制御下、成熟骨芽細胞にのみmiR-125bを過剰発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)の脛骨にPY8119細胞を移植する骨転移モデルにおいて、骨転移に伴う骨吸収が野生型(WT)マウスと比較し、Tgマウスで有意に抑制されていることをμCT解析にて明らかにした。 しかし、脛骨へ直接がん細胞を注入する手法は、解析範囲の海綿骨を機械的に大きく破壊してしまう上、がん骨転移の顕在化に時間を要し、がん細胞の生着の個体差が大きい等の問題点があった。miR-125bの骨吸収への影響のみならず、がん細胞への直接的な影響をin vivoで詳細に解析するため、骨転移モデルをマウス尾動脈から逆行性にがん細胞を注入する方法(Nat Commun. 2018, 9, 2981)に切り替えて実施した。6週齢のWTおよびTgマウスの尾動脈からPY8119細胞を注入したところ、2週後でμCTによりWTマウスにおいて激しい骨吸収(皮質骨含む)が確認され、in vivoイメージングで大腿骨・脛骨を主としたがん細胞の増殖が確認された。また、骨吸収およびがん細胞増殖のいずれにおいてもTgマウスにおいて有意に抑制されていた。 今後は、がん細胞におけるmiR-125bのターゲット遺伝子を明らかにするため、miR-125b mimicを用いたPCRアレイを行う予定である。
|