研究実績の概要 |
今年度は早産妊婦を中心に症例を集めた。その結果、3年間で172人が歯周科を受診し、そのうちの156症例(早産46症例、正期産108症例)についてPg-FimA type 別血清抗体価と口腔状態(PESA;歯周ポケット面積、PISA;炎症性歯周ポケット面積)並びに早産の関係について詳細な解析を行った。なお、血清抗体価を低値群(健常対照群平均値±3SDまで)とそれ以上の高値群(歯周治療を要する群)に分類した。いずれのタイプのPgも高値群においてPESA, PISAの値が高く、特に、TypeⅡ, Ⅳ, Ⅴの高値群では統計的有意差(p<0.01)が認められ、疾患活動度と関わることが示唆された。早産発症率は血清抗体価高値群では低値群に比べ高く、そのオッズ比は、TypeⅠ=1.22, TypeⅡ=2.03, TypeⅢ=1.63, TypeⅣ=1.89, TypeⅤ=1.31で、TypeⅡ, Ⅲ, Ⅳの血清抗体価の高い妊婦は早産発症率が2倍ほど高かった。以上の結果から、TypeⅡとⅣの血清抗体価は、歯周炎活動度を反映し、歯周炎関連早産の予測マーカーとなる可能性が示唆された。一方、Gal-3血清抗体価は早産群(30-36週出産)で上昇しており、同時期の正期産群より有意に高く、早産の一般的マーカーとなる可能性が示唆された。早産群の中にはGal-3上昇を示さない例も含まれるため、さらに症例を集め原因別に解析する必要がある。In vitroではTreponema denticola (Td)の胎盤細胞への感染(MOI50,100)の影響を調べた。TD感染は濃度依存的に胎盤細胞のGal-3、COX2、TNF-αやIL-8などの早産関連因子の発現を増加させた。また、Pg、Td、Tf死菌もこれらの因子の発現を誘導したが、Pgが最も強く作用し、早産の発症に強く関わる可能性が示唆された。
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