研究課題/領域番号 |
16K11447
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
張 旌旗 九州大学, 歯学部, 技術専門員 (80380707)
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研究分担者 |
清島 保 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20264054)
城戸 瑞穂 佐賀大学, 医学部, 教授 (60253457)
和田 裕子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 研究員 (70380706)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エナメル芽細胞 / TRPチャネル / エナメル質形成不全 / 歯 / 歯の発生 / 組織学 / 走査電子顕微鏡 / 口腔解剖学 |
研究実績の概要 |
私たちは皮膚に高発現している温度感受性TRPチャネルがエナメル質の形成調節に関与することを仮説とし、野生型(WT)とTRPチャネル遺伝子欠損マウス(V3KO、V4KO)を用いて研究を行った。H29年度はエナメル芽細胞におけるエナメルタンパクの発現、TRPチャネルとエナメル基質のカルシウム、リン、マグネシウムの分布状況について検討した。 生後21日齢のWTおよびV3KO、V4KOマウスの歯を用いて、アメロゲニン(AMEL)、アメロブラスチン(AMBN)、エナメリン(ENAM)の抗体を使って免疫染色を行った。WTおよびV3KO、V4KOマウスの歯はいずれもエナメルタンパクの免疫反応陽性を示したが、WTマウスに比べて弱かった。特にWTマウスではアメロブラスチンの免疫反応が近心端および細胞核を含めてエナメル芽細胞全体が強く染色された。一方、V3KO、V4KOマウスではアメロブラスチンは近心端に弱い免疫反応が観察された。アメロブラスチンはカルシウムイオンと結合する重要な役割があり、TRPチャネルの遺伝子欠損によりその産生が減少されることによってエナメル質の形成に影響を与えたことが考えられる。次に、我々はマウス歯のエナメル質形成にTRPチャネル遺伝子欠損による影響について、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、エナメル質のミネラル分布状況を解析した。TRPチャネル遺伝子欠損マウスはWTと比較して臼歯および切歯エナメル質のカルシウム、リンの減少が明らかになった。エナメル質形成にエナメルタンパク、特にアメロブラスチンの減少およびエナメル質のカルシウムとリンの減少がエナメル質低石灰化を惹起する原因と考えられる。我々は更に、TRPチャネル遺伝子欠損マウスエナメル質のマグネシウムの減少も観察された。これらのことから、TRPチャネルはエナメル質の形成に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度開始したWTおよびTRPチャネル遺伝子欠損マウス歯胚および生後21日齢マウス歯におけるエナメルタンパクの免疫染色、またEPMAによる成熟マウスの歯におけるカルシウム、リン、マグネシウム分布状況の解析について追加実験を実施したため、H29年度に予定していたTRPチャネル作動薬または阻害薬による歯胚細胞内のカルシウムイメージング実験の開始が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はTRPチャネル作動薬または阻害薬による歯胚細胞内のカルシウムイメージング実験を継続し、歯の発生過程におけるミネラル成分沈着へのTRPチャネル関与について更に研究を進める。また、TRPチャネル遺伝子欠損によるエナメル芽細胞の影響について生後14日齢のマウスを用いて、エナメル芽細胞の標本を作製し、その微細構造を透過型電子顕微鏡にて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度の価格変動により機器購入が出来なかった分の繰越金およびH29年度に予定していた一部の実験が遅れたことによって、使用予定分の実験動物や試薬などの購入を行わなかったため、残額が生じた。
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