研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌の微小環境、特に細胞外基質の改変に着目して免疫組織学的に解析を行った。微小環境の形成や変化は扁平上皮癌の原発だけでなく、リンパ節への転移の成立や浸潤でも起こっており、頸部郭清術で得られたリンパ節を加えて検討した。検討した因子は、LOX (lysyl oxidase), LOXL2 (lysyl oxidase like protein-2), MMP14 (matrix metalloproteinase-14 ), S100A8, TIMP1 (tissue inhibitor of matrix metalloproteinase-1)である。 LOX, LOXL2はコラーゲンとエラスチンの架橋を形成する酵素で、線維化に関係する因子である。MMP14は膜型マトリックスメタロプロテナーゼで細胞外基質のコラーゲンを分解する。S100A8はS100A9とともに複合体Calprotectinを形成する。CalprotectinはMMP-2を制御する。TIMPはMMPsと複合体を形成し、MMPの機能を抑制することにより、MMPのコラーゲンの分解を減弱させ、線維化を生じさせる。 本研究ではLOX, MMP14, S100A8は原発や転移巣の腫瘍実質細胞や実質周囲の炎症性細胞、線維芽細胞様細胞、樹枝状細胞などに発現していた。リンパ節非転移例と比較して、転移症例での転移リンパ節やそれに近接する転移巣を含まないリンパ節での周辺洞で陽性細胞が増加しており、リンパ節転移に関与する微小環境の形成に関係していることが示唆された。 LOXL2やTIMP1は腫瘍実質より周囲の炎症性細胞の発現が強く、転移の有無にかかわらず、陽性細胞を含むmarginal sinus histiocytosisの形成は少なかった。LOXL2、TIMP1は転移後の浸潤の微小環境形成に関与していると思われる。
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