研究実績の概要 |
Porphyromonas gingivalisは、歯周病をもたらす最重要細菌として知られている。本菌は、糖分解能を有しない為に、タンパク質を分解して栄養源を得ている。本菌の最も強力なタンパク質分解酵素としてジンジパインが知られる。ジンジパインは、栄養源獲得のみならず、周囲組織への破壊をもたらす病原因子として特に重要である。ジンジパインは、RgpA, RgpB, Kgpの3つからなり、9型分泌機構により菌体外に分泌される。これらのうち、RgpBは、菌体表面でA-LPSに共有結合する。同様に9型分泌機構の基質であるHBP35, TapA, PepKなどもA-LPSに共有結合し、菌体表面に把持される。このように、A-LPS生合成機構の解明、ならびに、その共有結合機構の詳細を明らかにすることは重要である。 本菌には、O多糖の組成が異なる2種類のLPSがあり、A-LPSならびにO-LPSと呼ばれている。平成29年度に、それぞれのO多糖における糖転移酵素の順序を明らかにし、論文にて発表することができた。(Shoji et al. Mol Oral Microbiol. 33(1): 68-80, 2018) A-LPSを特徴づけているのは陰性荷電を持つことであり、その候補として、ジアセチルグルクロン酸の存在が強く示唆されていた。このことについて、鹿児島大学大学院・理工学研究科の橋本雅仁教授と共にA-LPSの組成解析を行っている。ABEE法による単糖解析を行ったものの単独でのジアセチルグルクロン酸の存在は確認できなかった。現在、トリフルオロメタンスルホン酸による分解を用いてその検出を試みている。 A-LPSと9型分泌機構の基質タンパク質との共有結合機構については、あるシステインプロテアーゼ阻害剤が部分的にその結合を阻害している結果を得た。他のシステインプロテアーゼ阻害剤でも同様な結果が得られるかを調べていく予定である。
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