研究課題/領域番号 |
16K11454
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
倉本 恵梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60467470)
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研究分担者 |
桑木 共之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80205260)
齋藤 充 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50347770)
柏谷 英樹 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (70328376)
大野 幸 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, その他 (00535693)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 運動野 / 三叉神経系 / 痛覚 |
研究実績の概要 |
本研究では、運動野からのトップダウン信号が、脳幹に存在する痛覚抑制の回路を賦活化することで鎮痛効果を発揮しているという仮説を立て、詳細な神経回路と作用機序を明らかにし、より効果的な三叉神経痛の治療法開発につながる基礎的知見の提供を目的としている。 まず、運動野からのトップダウン的痛覚抑制に働くと予想される神経回路が実際に存在するかどうか、形態学的手法により検証した。先行研究において、運動野の電気刺激により活動性が上昇すると報告されている脳領域のデータに基づき、以下の2つのトップダウン的痛覚抑制回路を想定した。 (1)間接的経路:運動野→前頭前野(眼窩野または帯状回)→中脳水道周囲灰白質 (2)直接的経路:運動野→中脳水道周囲灰白質 これらの候補神経回路が実際に存在するかどうか、順行性のウイルス性神経トレーサーであるアデノ随伴ウイルスベクターをラットの運動野、特に、顎顔面領域に注入し、軸索投射先を形態学的に検索した。臨床において、感覚野を刺激しても鎮痛効果がほとんど得られないとされている。そのため対照実験として感覚野へのウイルスベクターの注入も行った。その結果、運動野の痛覚抑制効果を中継していると考えていた中脳水道周囲灰白質には、運動野のニューロンはあまり投射していないことが明らかになった。そのため運動野からの軸索投射があり、感覚野からの軸索投射がなかった領域を痛覚抑制に働く候補領域として、研究を進めていくこととした。解剖学的なデータを蓄積するとともに、三叉神経痛のモデルラットの開発に着手した。フォンフレイによる機械的刺激を与えて、痛覚を評価することは、顔面部では難しいことがわかったため、顔面領域を拭う動作や、苦痛を示す表情を観察することで、痛覚の評価を行う方法を採用した。今後は光遺伝学の技術を取り入れて、皮質運動野が痛覚抑制に関与することおよび、その機能を担う回路を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
慢性疼痛モデルラットの作製方法が確立した。 疼痛の評価方法もほぼ確立することができた。 あとは大脳皮質運動野を光遺伝学、もしくは薬理遺伝学的に特異的に活性化する技術を完成する必要があるが、技術導入が予定より遅れているため、区分をやや遅れているとした。 独力で光遺伝学の実験系を立ち上げるのは困難であるため、現在は鹿児島大学の共同研究者にご指導をいただき、さらに、海外の共同研究者のラボを訪問し、指導を受けながら、光遺伝学と行動解析を組み合わせた実験系のセットアップを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を申請したときに想定していた痛覚抑制の神経回路とは異なる神経回路が、痛覚抑制に働く可能性が示唆された。解析する神経回路は変更するが、解析方法は変更する必要がないため、当初の予定どおり研究を進めている。 三叉神経痛モデルラットの作製方法を確立し、疼痛の評価方法も、ほぼ、確立したので、次は実際に大脳皮質運動野を含む神経回路を光遺伝学で操作し、痛覚抑制に関わる神経回路を明らかにしていく。 具体的には、アデノ随伴ウイルスベクターにより大脳皮質運動野の神経細胞に光感受性チャネルChR2 またはSwiChR2を発現させ、光ファイバーを刺入して神経細胞を活性化または抑制する。それと同時に行動解析を行い、疼痛に変化が生じるかどうか、評価することで、運動野刺激が痛覚抑制に働く回路とそのメカニズムを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に5326円ので必要なものが思いつかなかったので、次年度に使用することにしました。
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