研究課題/領域番号 |
16K11455
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
豊野 孝 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (10311929)
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研究分担者 |
中富 満城 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (10571771)
片岡 真司 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80364149)
瀬田 祐司 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (90291616)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 味覚受容体 / 転写調節 / うま味 / アミノ酸 / T1R1 / T1R3 |
研究実績の概要 |
うま味はT1R1およびT1R3により受容される。これらの受容体の数は、転写段階において制御が行われていると考えられ、その制御は転写因子が転写調節領域のDNAに結合することにより行われている。したがって、味覚受容体の転写制御機構の機能不全による味覚受容体の数の減少が、味覚障害の原因の一つとなっている可能性が推察される。しかしながら、味覚受容体の転写制御機構の詳細に関してはほとんど明らかになっていない。うま味受容体T1R1は、味蕾においてうま味の受容に関与しているが、うま味以外にもアミノ酸を受容すること、および味蕾以外の器官においても発現していることが明らかになっている。そこで本研究では、T1R1遺伝子を発現している筋芽細胞株C2C12を用いて、うま味受容体T1R1遺伝子の転写制御機構の解析を行った。 マウスT1R1遺伝子の各段階の長さの上流領域を有するレポータープラスミドを作成し、レポーターアッセイを行った。その結果、開始コドン上流-148bp ~ -91bpに転写活性化配列が存在することが明らかになった。その配列中のE box、およびSP/KLFファミリーが結合するGT-boxに変異を導入したところ、GT-boxにおいてレポーター活性の低下が認められた。次にSp1, Sp3, Sp4, KLF2, KLF4の過剰発現を行い、T1R1遺伝子プロモーターのレポーターアッセイを行ったところ、KLF2, KLF4においてレポーター活性の増加が認められた。C2C12において、RNAi法を用いてKLF2、KLF4の発現阻害を行ったところ、KLF2においてT1R1遺伝子のレポーター活性の低下が認められた。以上の結果より、C2C12において、マウスT1R1遺伝子のプロモーター領域中のGT-boxにKLF2が結合し、転写の活性化に関与していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではマウスT1R1遺伝子の転写調節機構の解明を目的として行った。その第一段階として、マウスT1R1遺伝子の転写活性化配列の同定、およびその配列に結合する転写因子の同定を行った。 その結果、開始コドン上流-148bp ~ -91bpに転写活性化配列が存在することが明らかになった。さらにその配列中に存在するGT-boxが転写活性化に関わっていることが明らかになった。次にSp1, Sp3, Sp4, KLF2, KLF4の過剰発現を行い、T1R1遺伝子プロモーターのレポーターアッセイを行ったところ、KLF2, KLF4においてレポーター活性の増加が認められた。C2C12において、RNAi法を用いてKLF2, KLF4の発現阻害を行ったところ、KLF2においてT1R1遺伝子のレポーター活性の低下が認められた。以上の結果より、C2C12において、マウスT1R1遺伝子のプロモーター領域中のGT-boxにKLF2が結合し、転写の活性化に関与していることが推察された。
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今後の研究の推進方策 |
マウスT1R1遺伝子における転写制御機構の解析を以下の内容で行う。(1) クロマチン免疫沈降法により、転写因子KLF2がT1R1遺伝子のGT-boxへの結合しているかを調べる。(2) T1R1遺伝子のGT-box 近傍の配列に結合する他の転写因子の同定、およびその機能解析。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスT1R1遺伝子の 転写調節機構の解析において、クロマチン免疫沈降法によるゲノムDNAへの転写因子KLF2の結合の解析を行った。しかしながら、条件検討等に時間がかかり、本解析に必要な抗体の購入を延期したために、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
クロマチン免疫沈降法によるゲノムDNAへの転写因子KLF2の結合の解析を次年度に行うこととし、未使用額はその解析に必要な抗体の購入などの経費に充てる予定である。
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