• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

22q11.2欠失症候群原因遺伝子による頭蓋底軟骨結合の成長維持メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K11460
研究機関東海大学

研究代表者

梶原 景正  東海大学, 医学部, 講師 (00204397)

研究分担者 木村 穣  東海大学, 医学部, 教授 (10146706)
青山 謙一  東海大学, 医学部, 助教 (10647530)
内堀 雅博  東海大学, 医学部附属病院, 臨床助手 (50749273)
太田 嘉英  東海大学, 医学部, 教授 (60233152)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード頭蓋底軟骨結合 / 22q11.2欠失症候群 / Sez12 / TBX1 / ノックアウトマウス / 初代軟骨細胞 / DGCR2 / TGF-beta
研究実績の概要

我々が検討しているSez12遺伝子は、22q11.2欠失症候群のゲノム欠失領域にコードされているDGCR2遺伝子のマウスホモログである。我々は、GFP遺伝子をノックインさせたSez12遺伝子ノックアウト(Sez12-KO)マウスを用いてDGCR2遺伝子欠失と22q11.2欠失症候群発症との関連性について検討している。
本年度では、Sez12-KOマウスより調製した初代軟骨細胞を用いて、TGF-betaシグナルに影響を与えるSez12タンパク質の細胞内機能を検討した。通常の培養条件では、Sez12-KO軟骨細胞は野生型細胞と同様に瓦状形態を示し、Ⅱ型およびX型コラーゲンを発言していた。しかし培養液にTGF-betaを投与すると、Ⅱ型コラーゲンのみを強発現する線維芽細胞様の軟骨細胞に変化した。しかし野生型軟骨細胞ではTGF-beta投与しても上記の変化は認められなかった。以上の知見からSez12遺伝子機能はTGF-betaシグナルを制御する役割を果たしていることが認められた。またTGF-betaシグナルで発現誘導されたSez12が、TGF-betaシグナルを制御し、正常な軟骨細胞の増殖分化に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。一方、ヘテロ型Sez12-KO軟骨細胞では上記の変化が認められなかったものの、Sez12遺伝子に隣接する22q11.2欠失症候群関連遺伝子群をヘテロ型にノックアウトしたDf1マウスとの交配で得られたSez12,Df1のダブルヘテロ型ノックアウト軟骨細胞では、Sez12-KO細胞と同様なTGF-betaシグナル異常が認められた。以上の結果から、22q11.2領域にコードされるDGCR2を含めた幾つかの遺伝子は、複合的作用で軟骨細胞の増殖分化を制御し、正常な骨格形成に役割を果たしていると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度の顎顔面骨格の解析から、ホモ型Sez12ノックアウト(Sez12-KO)マウスおよびヘテロ型Sez12/Tbx1ダブルノックアウト(Sez12-KO/Tbx1-KO)マウスの顎顔面骨格に顕著な異常が認められた。この分子メカニズムを解明するために、マウス個体より初代軟骨細胞を調製し、軟骨細胞のSez12やTbx1が制御するシグナル伝達を検討し、Sez12-KO軟骨細胞の増殖分化異常のメカニズムを解析した(梶原・青山・内堀が解析担当、梶原・木村・太田が統括)。
(1) TGF-betaを投与した場合、ホモ型Sez12-KO軟骨細胞ではTGF-betaシグナルが過剰に伝達され、細胞分化が逸脱することが認められた。即ち、軟骨細胞の分化過程で発現するX型コラーゲンが消失し、Ⅱ型コラーゲンの発現が高い増殖性の軟骨細胞に変化していた。一方、ヘテロ型Sez12-KOやヘテロ型Tbx1-KOの初代軟骨細胞では、このような細胞変化は認められなかったが、ヘテロ型Sez12-KO/Tbx1-KO初代軟骨細胞で、TGF-beta投与後にホモ型Sez12-KO細胞と同様な軟骨細胞の分化異常が認められた。
(2) Sez12-KOマウスでは、ノックインさせた緑色蛍光タンパク質(GFP)がSez12プロモーターで発現するように設計されている。上記のTGF-beta投与によりSez12-KO軟骨細胞の分化過程に異常が発生するとき、GFP発現レベルが有意に高くなることが認められた。従って、TGF-betaシグナルが過剰になったとき細胞ではSez12遺伝子が発現し、この後に続くTGF-betaシグナルを調節する可能性が考えられた。
従って、Sez12遺伝子の欠失または遺伝子変異による発現レベルの低下は、軟骨細胞の分化異常に起因した骨格異常が引き起こされるという分子メカニズムが明らかにされた。

今後の研究の推進方策

本年度のマウス初代軟骨細胞の解析から、ホモ型Sez12-KOマウス、またはヘテロ型Sez12/Tbx1ダブルノックアウト(Sez12-KO/Tbx1-KO)マウスの骨格異常が、軟骨細胞のTGF-betaシグナル調節不全による増殖分化異常に起因することが認められた。また軟骨細胞のTGF-betaシグナルが過剰となったとき、Sez12が発現してTGF-beta受容体と相互作用し、TGF-betaシグナルを調節する分子メカニズムも明らかとした。従って、Sez12遺伝子発現レベルに変化を引き起こす遺伝子多型があるとすれば、TGF-betaシグナルを介した 軟骨細胞の増殖分化に影響をあたえ、顎顔面領域を含めた骨格異常に何らかの役割を果たす可能性が考えられる。そこで次年度では、Sez12遺伝子のヒトホモログDGCR2遺伝子の発現レベルに影響をあたえる1塩基多型(SNP)を解明し、その分子メカニズムを検討する。このために、様々な研究分野で汎用されているヒト腎上皮由来のHEK293細胞を用い、いままでに登録されているDGCR2やTBX1のSNPの中か遺伝子発現に関連する可能性のあるSNPについてCRISPER-Cas9システムによりHEK293細胞に再現し、TGF-betaシグナルの動態をLucレポーターアッセイにより検討する。これにより軟骨細胞の増殖分化異常に関する遺伝子多型を解明する(梶原・青山・内堀・木村が担当)。さらに顎顔面骨格に異常をもつ臨床サンプルから、上記研究計画で得られたSNPが認められるかどうか検討する(内堀・太田が担当)

次年度使用額が生じた理由

CRISPER-Cas9システムが挿入されたヒトHEK293細胞株を購入する予定だったが、次年度に購入する計画に変更したため。この細胞株の購入に350,000円程度(時価)と細胞培養関係の消耗品代を計画する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Microneedle pH Sensor: Direct, Label-Free, Real-Time Detection of Cerebrospinal Fluid and Bladder pH2017

    • 著者名/発表者名
      Ganesh Kumar Mani, Kousei Miyakoda, Asuka Saito, Yutaka Yasoda, Kagemasa Kajiwara, Minoru Kimura, Kazuyosi Tsutiya.
    • 雑誌名

      ACS Appl. Mater. Interfaces

      巻: 9 ページ: 21651-21659

    • DOI

      10.1021/acsami.7b04225

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Dgcr2 gene contributes to maintenance of chondrocytes in mouse skull base.2017

    • 著者名/発表者名
      Kagemasa Kajiwara
    • 雑誌名

      Journal of Oral Biosciences

      巻: Supplement ページ: 196-196

    • 査読あり
  • [学会発表] 22q11.2欠失症候群モデルを用いたDgcr2遺伝子による頭蓋底軟骨の制御メカニズムの解析2017

    • 著者名/発表者名
      梶原景正
    • 学会等名
      第59回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] 22q11.2欠失症候群の骨格異常に関するDGCR2のTGF-betaシグナル制御メカニズム2017

    • 著者名/発表者名
      梶原景正, 青山謙一, 内堀雅博, 斎藤雅幸, 弥栄聡介, 太田嘉英, 木村穣
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会(ConBio2017)
  • [備考] Kajiwara K. Research Unit

    • URL

      http://kage.med.u-tokai.ac.jp

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi