研究課題/領域番号 |
16K11463
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
伊藤 由美 鶴見大学, 歯学部, 講師 (00176372)
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研究分担者 |
梁 洪淵 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10298268)
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 自己免疫疾患 / 組織障害 / focus score / 自己抗体 / 唾液分泌量 |
研究実績の概要 |
自己免疫性唾液腺炎(シェーグレン症候群: SS)の腺分泌の低下には,免疫応答を介した腺組織障害を含む複合的な要因が関与しており,病態解明が極めて困難な疾患である.そのため治療方針は確立されておらず,病態の解明が急務であるが,未だに統一された診断基準が策定されていないのが現状である.我々は施設では多くのSS症例の病理組織標本を有するため,形態学的視点から本症の組織障害の解明を試みている.初年度は,実際には自己抗体や唾液分泌量などの臨床的な検査結果と,組織障害の程度の関連性を統計学的に解析し,病態の重症度との関連性を検討することを目的として,まずデータの整理と抽出を行い,以下の項目を検討した.病理医単位で全ての検体の診断評価を再度行った.次年度は、病理組織診断には,従来のGreenSpan分類の4段階評価に加えて,2017年度の助成金で購入した「病理診断支援ソフトウエア Patholoscope」を用いて面積率を計測し,正確なfocus scoreを算出した.また巣状のリンパ球浸潤を伴った導管の形態変化を検討したところ,唾液分泌量,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体と組織障害の程度に相関関係が確認された.この結果をJPNの診断基準に基づいて検討したところ,SSと診断された症例は80例,抗SSA抗体陽性症例は59例(74%),組織判定も併せた陽性症例は45例(76%)であった.以上の結果から,唾液分泌量は感度が最も高いが(98%),特異度が低く(21%),それに対し口唇腺生検と血清検査の感度はそれぞれ(78%)と(74%)であったが,特異度は両者共にそれぞれ(98%)と(95%)と極めて高く,診断に有用な項目であることを確認した. これらの結果に基づき,昨年度は組織障害の形態変化と唾液分泌量の低下の関係を解明するために免疫染色を用いた検索を行ったところ,現時点では腺房細胞周囲にみられる筋上皮細胞が減少していることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最終年度において,予定していた形態学的解析を中心に研究を進めていたが,使用予定の抗体が劣化すると言う予期せぬアクシデントに見舞われ,研究結果に不具合が生じてしまった.また一身上の都合により実験に費やす時間が激減し研究が滞ってしまったため,研究期間を延長し遅れを取り戻す.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに,口唇生検の病理組織学的な組織障害に基づいた病態とSSの診断において,その有用性が証明された.さらに自己抗体(SSA,SSB)とその組織障害の程度の間に相関関係が得られたことにより,SSの病態解明に形態変化の検索は極めて有用であることが証明された. 次にSS症例のバイオマーカーの検出を目的として,組織障害に関与する因子としてアポトーシスや酸化ストレス関連交代を用いた免疫学的腫瘍を用いた検索を行い,分泌障害の因子の組織への発現状況を詳細に検討し,組織障害との関連性について比較・検討を行う. それらの結果を踏まえ,口唇生検材料を用いた網羅的解析を行い,病態把握に有用なバイオマーカーの検出を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度において,研究機器の不具合が生じ,研究に使用する薬品等の一部に劣化がみられ,免疫染色をはじめとする一部の実験を再実施しなければならない状況に陥ってしまった.本来であれば前年度中に再実験のための試薬を購入等により対応するところであったが,加えて予期せぬアクシデントにより,研究に費やす時間も大幅に減少してしまったため,当初の計画通りに研究を遂行することができず,次年度使用額が生じてしまった. 次年度の使用計画は,消耗品を含め,組織障害の病態把握に関連する因子である炎症性サイトカインを始めとする各種抗体の購入と,データ解析ならびに最終評価に関わる諸経費のために使用する.
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