歯周病関連細菌のPorphyromonas gingivalisを用いて、これまでに糖鎖修飾された蛋白質を網羅的に検出して同定を行ってきた。その結果、外膜蛋白質での糖蛋白質の存在を明らかにし、主要外膜蛋白質であるOmpA様蛋白質の修飾糖鎖としてN-アセチルグルコサミン、シアル酸やその他の糖を検出している。ところが、これらの糖鎖修飾機構については、いまだによく分かっていない。そこで本研究では、糖蛋白質の糖鎖修飾に関わる糖転移酵素を探索し、その機能を明らかにする。選定した糖転移酵素の変異株を作製し、菌体に及ぼす影響の検討を行う。また、宿主に対する病原性への影響も検討して、糖転移酵素の生物学的な意義を追究することを目的とする。 歯周病関連細菌として重要であるPorphyromonas gingivalisおよびTannerella forsythiaの糖転移酵素をデータベースから改めて検索を行った。N-アセチルグルコサミン転移酵素については、すでに報告のあるものとの相同性を示す酵素の候補を見つけることができた。ところが、シアル酸転移酵素については、他菌で報告されているものとの相同性が高いものは見つけることができなかった。おそらく、これらの細菌ではシアリダーゼがシアル酸転移機能を併せもっているものと考えている。検索結果を基にして、変異株の作製を進めてみたものの、満足なものは作製できていない。一方、N-アセチルグルコサミン転移酵素とシアル酸転移酵素のそれぞれに対する阻害剤を用いて、菌体の増殖への影響や菌体蛋白質の糖鎖修飾の変化についての検討を行った。いずれの阻害剤も菌体の増殖に影響を及ぼしたが、糖蛋白質の発現パターンには明確な変化はみられなかった。その他に、糖鎖修飾を有するOmpA 様蛋白質は、血清抵抗性や抗菌ペプチドに対する抵抗性にも関与することが明らかになった。
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