研究課題
歯周病原細菌のPorphyromonas gingivalisの持つ付着因子であるMfa1線毛は、主要サブユニットMfa1が重合した繊維状構造物にアクセサリー分子Mfa3-Mfa5が結合していると考えられている。本研究では、本線毛因子の形成機序を解明し、未知なる機能を明らかにすることを目的とした。平成28年度では、Mfa5のアミノ酸配列の一次構造から推定されるCTD領域(T9SSに認識される領域)あるいはvWF(タンパク質相互作用に関わる領域)の変異株を作製し、Mfa5の局在化とMfa3及びMfa4の組み込みに及ぼす影響を検討した。ΔCTD株では、Mfa5は細胞内に蓄積し、Mfa5のみならずMfa3及びMfa4も精製線毛に組み込まれなかった。T9SSの構成因子をコードするporU遺伝子の変異株(ΔporU株)についても同様の解析を行ったところ、Mfa5は菌体内に蓄積した。以上の結果から、Mfa3およびMfa4の線毛への組み込みには、T9SSによるMfa5のCTD領域依存的な分泌が必要であることが考えられた。一方、ΔvWF株では、精製線毛には、Mfa5は認められないものの、Mfa3およびMfa4は検出された。この知見から、Mfa5は線毛先端でvWFを介してMfa4と結合することが強く示唆された。変異株の菌体表面での線毛発現量をFiltration ELISAにて検討したところ、Δmfa5株、ΔCTD株、porU変異株では有意に減少した。この結果から、Mfa5が細胞表面に輸送されることが、Mfa1線毛の発現にとって重要であることが考えられた。Mfa1線毛因子の結晶構造が明らかになったので、それらの構造を基に、アミノ酸置換株を作製し、機能に及ぼす影響を検討する予定である。
3: やや遅れている
Porphyromonas gingivalisの変異株の作製が、やや遅れているが、それ以外は順調に進んでいると思われる。
今後は平成28年度に予定していた変異株の作製を進めるとともに、遅れている部分の実験についても実験系の確立を目指す。また、計画以上に進んでいる点については、今後も実験を継続して研究成果を得るとともに、新たな展開について模索する。特に、Mfa5のCTDの欠失が、Mfa1線毛の発現量の低下にどのように結びつくかを解析することで、Mfa1線毛の形態形成機序が理解できるように努力したい。
次年度使用額が生じた理由として、変異株作製後の解析に用いる試薬の購入が若干遅れたことがあげられる。また、初年度ということもあり、研究成果が学会発表の水準にまでは達しなかった部分があり、学会などへの出張を行わなかったため、旅費が発生しなかったことがあげられる。
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、物品費を増やすこと、学会への参加のための旅費に使用すること、論文投稿料として使用すること、などを計画している。
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