歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisの持つ付着因子であるMfa1線毛は、主要サブユニットMfa1が重合した繊維状構造物にmfa遺伝子クラスターより発現するアクセサリー分子Mfa3-Mfa5が結合していると考えられている。本研究では、本線毛因子の形成機序を解明し、未知なる機能を明らかにすることを目的とした。 平成30年度ではDr. Karina Perssonらが明らかにしたMfa1、Mfa2およびMfa3の結晶構造をもとに、線毛タンパク質の重合に関係していると予想されるN末端およびC末端の領域の変異株を作製し、Mfa1線毛の重合と形態形成に及ぼす影響を検討した。その結果、mfa1のC末端変異株ではMfa1の重合は全く認められなかった。また、Mfa1のN末端変異株においてはMfa1重合の熱安定性が低下した。以上の結果から、Mfa1タンパク質の重合にはN末端とC末端のどちらも関与していることが考えられた。また、Dr. Richard Lamontとの共同研究により、Mfa3がMfa1、Mfa2、Mfa4およびMfa5との結合に関与していることを明らかにした。 線毛の機能解析においては、線毛タンパク質がマンノースやガラクトースなどの糖鎖修飾を受けている可能性があり、種々のレクチンと反応性を有することが分かった。 本研究にて得られた菌株を用いることにより、新しい線毛機能と構造の解明に繋げていきたい。
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