研究実績の概要 |
本課題の採択当初にはMASC (Mammary analogue secretory carcinoma)として提唱後、研究を開始された乳腺相似分泌癌であるが、その後WHO Classification of Head & Neck Tumours (4th ed)2017で新規亜型として分類され、現在は分泌癌 (SC: Secretory carcinoma)として広く認識されている。本疾患の関連変異遺伝子の解析を行うため、当初の計画通り、唾液腺分泌癌症例を38例を症例収集した。当初はETV6-NTRK3の融合遺伝子を腫瘍の分子病理学的特徴として報告されていたが、その後、ETV6のパートナー遺伝子としてRET (Andreasen S, Am J Surg Pathol. 2018), MET (Guilmette J, Hum Pathol. 2019), MAML3 (Guilmette J, Hum Pathol. 2019)が報告された。さらにはVIM-RET (2019 USCAP)やEGFR-SEPT14 (Black M, et al Head Neck Pathol. 2019)などの新規融合遺伝子を認める症例も報告されている。当科で収集した38例においては、35例にETV6-NTRK3融合遺伝子を認め、その他としてETV6-RET融合遺伝子 1例、ETV6-MET融合遺伝子 1例、およびETV6-MAML3融合遺伝子症例も1例認めた。過去に分泌癌症例に強い線維化と壊死所見を認める症例が含まれ、ETV6-X融合遺伝子を内包する症例が存在することを報告 (Am J Surg Pathol. 39(5)2015, p302-610)したが、その後Czech RepublicのDr. Skalovaらによりこれらの症例はETV6-RET融合遺伝子を認めることが報告された。我々の収集した症例においては、ETV6-RET融合遺伝子のみでなく、ETV6-METおよびETV6-MAML3融合遺伝子を認める2症例も同様に強い線維化と壊死所見を認めたことを2019年愛知県臨床細胞学会主催第16回細胞検査研修会 基調講演で報告した。
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