研究実績の概要 |
口腔領域おいて、現在、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染と種々の病変、特に扁平上皮癌との関連が示唆され、悪性化の一つの要因として重要視されている。しかしながらHPVの感染においてはいまだに不明な点が多く、その感染様式、感染頻度さらにHPV感染のタイプを解析する必要がある。 また我が国では、子宮頸癌予防を目的としたHPV-16,18型のワクチン等、女性への情報は広まりつつあるが、男性の感染対策は行われていない。性感染症で、16,18型以外の高リスク型も多く、男性の感染も予防されない限り子宮頸癌は無くならない。また、HPV関連の尖圭コンジローマや口腔癌、中咽頭癌、肛門癌などを減らすためには、豪州や米国同様、男性もワクチンは必須であると考える。 我々は、今回の科学研究費補助金を得て、モンゴル国における医療援助活動の一環として毎年実施されている歯科検診に同行し、歯科検診受診者と同伴者の内、インフォームド・コンセントの得られた者を対象に、口腔粘膜(頬粘膜)の擦過サンプルを採取するとともに、専門医による粘膜疾患の有無と種類の確認を行い、また飲酒や喫煙を含む生活習慣や口腔衛生状態などの調査も併せて行った。平成28度は約445名分、29年度は約403名分、30年度は約542名分のサンプルと情報を得た。 現在、愛知学院大学歯学部口腔病理学講座において、潜伏感染中の少量のウイルスも検出し得ると思われる感度の高い検出法として、ある程度断片化された鋳型DNAからも検出し得るPCR産物の小さなプライマーセットと、約40種類にのぼる粘膜指向性HPV型特異的プローブを用いたReverse Line Blot法により、HPV感染の検出と感染HPVの型の同定を行っている。また、論文投稿の準備も進めている。
|