ヒトの口腔には,唾液中に含まれる硝酸イオンを還元し,亜硝酸イオンや一酸化窒素を生成する細菌群(硝酸還元菌)が常在している.本研究は,口腔内硝酸還元活性の「個人差」に着目し,被験者毎の活性差と口腔菌叢を横断的かつ経時的に解析することで,口腔の硝酸還元活性を支える菌叢の解明を目指すものである.本研究課題の四年目(最終年度)は,NO発生剤による菌叢変動の結果の公表に至り,硝酸による菌叢変動の解析を実施した. (1)NOによる細菌叢の変動 採取した歯間プラークにNO発生剤であるSNPを添加後,SHI培地で20時間培養を行った.採取サンプルと培養後のサンプルの菌叢変化を次世代シークエンサーMiSeqを用いた解析で確認することで,NO感受性,あるいは耐性を示す口腔細菌群の同定を試みた.最終的に被検者12名から採取した計60サンプルの解析を完了し,標準細菌株のデータと合わせて学術雑誌Microorganismsにて結果を公表した(PMID: 31540050).加えて,日本歯科保存学会2019年度秋季学術大会の招待講演にて本研究結果を発表した. (2)上記の方法と同様に,採取した歯間プラークに硝酸塩を添加し,SHI培地で20時間培養を行った.採取サンプルと培養後のサンプルの菌叢変化を次世代シークエンサーMiSeqを用いた解析で確認し,その変化をRスクリプトを用いて解析した.現在,Rothia,Actinomycesをはじめ,いくつかの硝酸還元による菌叢変化に強く関与する菌種の同定に至っており,今後,結果がまとまり次第,学会発表と論文発表を行う予定である.
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